2021年7月 ドイツ・ベルギーの大洪水




 2021年7月14日(水)、低気圧ベルント(Bernd)がドイツ上空に停滞し、100年に1度と言われる大雨を降らせた(48時間で150~200ミリ・リットル)。

 その結果、ドイツ西部では数時間の内に小規模な河川が氾濫し、濁流が家屋を壊したり、車両を飲み込むなど、甚大な物損をもたらした。また、ドイツと隣国ベルギーで約190人(7月19日現在)が命を失った(参照)。被害の大きさは、メルケル首相がドイツ語には表現する言葉ないと憂いている通りである(参照)。

被災地 ラインラント・ファルツ州とは

 大洪水の被害が最も大きかった地域は、ドイツ南西部のラインラント・プファルツ州であるが、州名の一部となっている「ラインラント」(Rheinland)とは、「ライン川の地域」という意である。それが示す通り、州都のマインツ(Mainz)やコブレンツ(Koblenz)はライン川に面しており、両都市間は「ライン川クルーズ」の定番ルートとなっている(参考)。

 これに「プファルツ」(Pfalz)と呼ばれる地域が合併してできたのが「ラインラント・プファルツ州」(Rheinland-Pfalz RLP)である。

大洪水の要因

 ヨーロッパ最大の水源であるライン川は、アルプス山脈より流れだし、スイス、フランス、ドイツ、オランダを通り北海に到達する。山脈の雪解けや大雨によって川の水位が上昇し、大小の被害を発生させることは決してまれではない。つまり、ライン川は氾濫に「慣れている」。

 これに対し、ライン川に合流する小規模な河川が7月14日以降の豪雨に耐えきれず、大洪水を引き起こすことになった。

 なお、同時期、ドイツ北東部のブランデンブルク州では、より小規模な地域に、より多くの雨が降っているが、被害はほとんど出ていない。この違いは、大洪水が発生したドイツ西部では、年初より雨量が多く、土地が雨水をさらに吸収できなくなっていたことにあるとされる。また、最も被害が大きかったアーヴァイラー(Ahrweiler)群の小村は、曲がりくねった川(アー川 Ahr)に囲まれており、方々から濁流が押し寄せため、大惨事につながった(参照)。

 川の水位が予想以上に、急激に上昇したため、水位計が故障し、警告を与えることができなかったともされている(参照)。

 前掲のコブレンツでは、同じく国際河川であるモーゼル川がライン川に合流している。これは中世より存在してきた多数のドイツ諸邦の統一に重なるため、二つの川の合流地点には、1871年のドイツ統一を記念する公園(Deutsches Eck)が設けられている。7月14日以降の大雨でモーゼル川も水位が上昇しているが、結果として、ライン川の水位を上昇させることになった。結果として、ライン川の水位を上昇させており、警戒が続いている。

 なお、7月14日以降の大雨は、ラインラント・プファルツ州、また、同州からライン川が北上するノルトライン・ヴェストファーレン州で降っている。つまり、ライン川自体も記録的大雨の影響を受けている。

 ドイツの隣国ベルギーでも被害が発生しているのは、マース川が氾濫を起こしためである。


(参考)最大の被災地であるアーヴァイラー群ではドイツ連邦国防軍が戦車を投入し、復興作業を行っている。

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