2021年5月24・25日、ブリュッセルで欧州理事会(EU首脳会議)が開催されたが、前日の聖霊降臨祭の日には、ギリシアの空港から飛び立ち、リトアニアへ向かっていた民間航空機がベラルーシの首都ミンスクの空港に強制着陸させられる事件が発生した。それを行ったのはベルラーシ政府で、搭乗していたジャナーリストを拘束するためになされたとされている。
(参考)
NHKニュース
(参考)
ベラルーシ政府の反論
強制着陸させられたのは、EU加盟国の首都から他の加盟国の首都へ向かっていた、加盟国の民間旅客機(ライアン・エア機)と、EUは幾つかの点で関わっているため、直ちに非難声明を出しているが、祭日開けの首脳会議(欧州理事会)では、急遽、予定を変更し、主要議題として審議されることになった。
1. 対ベラルーシ政策
ベラルーシ政府が行った措置に対し、欧州理事会は以下の点を決定した。
- 飛行機から降ろされ、拘束されたジャナーリトとその交際相手の即時解放
- 事件を引き起こした個人および組織に対し制裁を発動すること(そのために必要なEU法の制定をEU理事会に要請)
- ベラルーシの航空会社がEUの上空を飛行することを禁止し、同航空会社のEU内の着陸を禁止すること(そのために必要な措置の発動をEU理事会に要請)
なお、昨年8月に実施されたベラルーシ大統領選挙で、ルカチェンコ大統領は、自身の再選を確実にするため、対立候補やジャーナリストの活動を制限したとされている。それに対する制裁として、EUは昨年10ないし11月より、ルカチェンコ大統領を含む個人や組織に対し、制裁を発動している(
参照)。
2. 対ロシア政策
ベラルーシとの外交関係が悪化する以前より、ロシアとの関係が悪化しているが、欧州理事会は従来の対ロシア政策の基本方針(5大原則)を確認している。なお、それには、①ソ連崩壊後、ロシアとは一線を置く東欧パートナー諸国との関係強化や、②エネルギー政策分野におけるEUの回復力(resilience)の強化などが含まれる一方で、③EUにとって重要な案件に関するロシアとの関係構築が含まれている。
3.対英政策
今月1日にEU・イギリス間の貿易・協力協定が発効するに至ったことを歓迎する。
なお、同協定は、イギリスがEUを脱退した現在におけるEU・イギリス間の関係について定める条約であり、2020年末までの発効を目指していた。しかし、EU側の批准が遅れたため(欧州議会の審理が遅れた)、2021年4月末までは暫定的に適用されていた。
4.中東情勢
イスラエルとパレスチナが停戦に合意したことを歓迎するとともに、EUは「2国共存」という形での和平実現を支援する。
(参考)
BBC News「イスラエルとパレスチナが停戦 攻撃激化から12日目」
5.新型コロナウィルス感染症対策
EU内で新型コロナウィルスに関するデジタル証明書(ditigal COVID certificate)が導入するされることになったを歓迎するとともに、EU内での自由な移動を促進するため、その迅速な実施を求める。また、EU内の旅行に関する方針の見直しを6月中旬にまで行うよう、EU理事会に要請する。