◎ 東京高裁昭和54年7月3日判決 (渉外判例百選10頁以下)
1. 事案の概要
(旧)ソ連国籍を有するAは、日本国内に建物を所有していたが、死亡し、同建物の相続について争いが生じた。
2. 審判要旨
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審判が下された当時の法例第25条(改正法例第26条、適用通則法第36条)によれば、相続の準拠法は、被相続人 Aの本国法になるが、ソ連はいわゆる不統一法国である。この場合、Aの本国法は、ソ連の国内法に従い決定されるが(法例第28条第3項、適用通則法第38条第3項)、ソ連にそのような規則があるかどうかは定かではない。そのため、Aの本国法は、同人に最も密接に関係する地の法律となる。Aがロシア共和国の市民であったこと、また、最後の常居所地がロシア共和国内にあったことから、ロシア共和国法をAの本国法とするのが相当である。
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ロシア法によると、ソ連邦内に存在する建物の相続には、ソビエト法が適用される。すなわち、建物の所在地法国が準拠法になる。
この理論(つまり、建物の相続は、所在地国法による)によると、準拠法は日本法になるが、ソビエト国際私法
も、反致を認めているので、二重反致が成立し、結局、ロシア共和国法が準拠法になる。
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