債権と物権
債権とは、AがBに売買代金の支払いを請求したり、BがAに土地の引き渡しを求めるなど、一定の行為を請求する権利を指す。AないしBが要求に応じなければ、この権利は実現されないのに対し、物権(例えば、所有権、占有権、抵当権など)は、物を直接的に、つまり、第3者の行為を必要とせずに支配しうる権利である。物権の円満な実現を妨害したり、その危険性がある場合には、権利者は、妨害またはその危険の除去・予防を請求することができる(物権的請求権)。債権とは異なり、物権的請求権は、物権が消滅しない限り、消滅時効にかからない(なお占有訴権について民法第201条参照)。
ある土地の所有権を有する者は、これと両立しない権利の発生を否定することができるが(物権の排他性)、他方、債権は、Aが同一の土地をBとCに二重に譲渡するなど、同一内容の権利を複数の者に与えることができる。BとCは、この二重譲渡を否認しえず(つまり、債権は排他性を有さない)、土地を取得できない場合は、Aに損害の賠償を請求しうるに過ぎない。
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