昭和51年5月21日、X(日本人)は、自らの父とされる男性A(韓国人)がその日に死亡したことを知ったが、その日から約2年7ヶ月を経た昭和53年12月25日に死後認知の訴えを提起した。
@ 事件当時の法例第18条第1項は、「子ノ認知ノ要件ハ其父又ハ母ニ関シテハ認知ノ当時父又ハ母ノ属スル国ノ法律ニ依リテ之ヲ定メ其ノ子ニ関シテハ認知ノ当時子ノ属スル国ノ法律ニ依リテ之ヲ定ム」と規定していた。そのため、死後認知の準拠法は、父Aに関しては韓国法、子Xに関しては日本法と決定された。
A 韓国民法第864条によると、死後認知の訴えは、父の死亡を知った日から1年以内にのみ許容される。そのため、本件Xの訴えは許されないことになる。 これに対し、日本民法第787条但書きによれば、父の死亡後、3年以内であれば、訴えを提起しうる。この規定によるならば、Xの死後認知の訴えは許容される。 〔判旨〕 本件の準拠法が日本法であるとすれば、死後認知請求が認められるものの、実際の準拠法である韓国法によれば、請求は認められない。そのため、韓国法の適用は我が国の公序に反し、排除されると考えることもできる。もっとも、死後認知に関する両国法上の違いは、技術的なものにすぎず、それぞれ合理的な理由に基づいているから、公序違反を理由に、韓国法の適用を否定することは相当ではない。 |
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下の図からもわかるように、単に、「3年」という長い期間が有利とは限らない。 |
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