5債 権 法 



5.1. 任意債権(意思表示・契約の成立や効力)

 この点に関しては、3. 法律行為 を参照されたい。

 

5.2. 法定債権

1総説

 法定債権とは、当事者の意思に関わりなく、法律に基づき成立する債権であり、事務管理、不当利得および不法行為に基づく債権がこれに属する。これらの債権の共通性に鑑み、法例は一括して定める(第11条)。

 

2事務管理に基づく債権(民法第697条参照)

@ 事務管理とは、法的義務がないのに、他人(本人)のために何らかの事務を行うことである。例えば、知人のために航空券を予約したり、留守中の隣人宛の宅急便を受け取り、着払料金を支払うことなどがこれに当たる。これに対し、親が子の権利・財産を保護・管理したり、後見人が被後見人のために法律行為を行うなど、法律上の義務に基づきなされるものは、事務行為に当たらない。

 我が国の民法上、事務管理者は本人に費用を請求しうる一方で(第702条)、本人に最も有益な方法で管理を継続しなければならない義務などが課される(第697条、第700条)。

A 準拠法は、原因事実発生地、つまり、事務管理地(管理行為地)の法による(法例第11条)。これは、そもそも事務管理とは社会生活上の相互扶助の理念に基づく制度であり、公益の維持を目的としていることから、事務管理地の法律を準拠法にすべきであるとの考えに基づいている。

 事務管理地とは現実に事務がなされている土地のことを指す。

(例)

財産を管理する場合は、その対象である財産の所在地
人(例えば、迷子の子供や危難者の救助)を管理する場合は、その人の所在地
営業を管理する場合は、営業所の所在地

なお、目に見えない無体物(債権)の場合は、注意を要する。通常の債権の場合は、債務者の所在地が事務管理地(原因事実発生地)となる。また、証券に化体(かたい)した債権の場合は、証券の所在地、無体財産権の場合は、財産の登録地または発行地が事務管理地(原因事実発生地)となる。


客体が数個、異なる地にある場合は、それぞれの所在地が事務管理地になる。

 客体の所在地が変更される場合は、管理者の恣意を防ぐ為(準拠法が自分に有利になるように、管理者が目的物の所在地を変更することを防止するため)、管理行為が開始された地を指す。従って、管理行為開始時の準拠法によって事務管理が成立しない場合は、その後、客体が事務管理の成立を認める国へ移動しても、事務管理は成立しない。もっとも、このような取扱いが公序に反するときは、管理行為開始時の準拠法によらない。


B 事務管理の成立・効力に関わる全ての問題は、事務管理地法によるが、以下の問題がある。

 本人のためにする意思の要否、本人の意思に反しないことなどの要件、管理者の管理承継義務(民法第700条参照)、管理の方法、注意義務の要否、本人の費用償還義務、本人の意思に反してなされた事務管理の効果なども、事務管理の準拠法による。

 事務管理は、法律上の義務なくして他人の事務を処理することを要するが、法律上の義務が存在するかどうかという問題は、先決問題 として、その義務の準拠法による。

 例えば、委任契約に基づき、管理する義務が存在するかどうかという問題は、委任契約の準拠法による。委任契約に基づき、管理義務が生じる場合には、事務管理について検討する必要はない。

 なお、管理者が、委任契約上の義務を超えて本人のために管理行為を行った場合、これは事務管理にあたるかどうかという問題が生じるが、これは事務管理の準拠法による。

 個々の管理行為それ自体は、それぞれの準拠法による。例えば、留守中の隣人宅の窓が壊れたため、修理を業者に依頼するときは、請負契約(債権)の準拠法(法例第7条)により、また、第3者が不法に侵入しているため、立退きを請求(物権的請求)するときは物権の準拠法(第10条)による。


  

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