【復習】 準拠法の決定方法
適用通則法に従い、ある渉外的法律問題の準拠法を決定するに際しては、まず、その法律問題を 単位法律関係 に分類しなければならない。
例えば、AはBからクリスタルの置物を購入したが、クリスタルを水晶と誤解していたため、契約の無効を主張することができるかという問題は、「法律行為の成立」に関する問題として捉える必要がある。そうすれば、適用通則法第7条に従い準拠法を決定することができる。
売買契約における錯誤
|
|
法律行為の成立(単位法律関係)
|
|
第7条
|
|
当事者が選択した法
|
|
Aはクリスタルと水晶が違うことを認識していた上で買い求めた場合はどうかという問題や、AはBから騙されていたとすれば、どうなるかという問題も、同じく、「法律行為の成立」の問題である。したがって、適用通則法第7条に従い準拠法が指定される。
つまり、民法上は個別の条文が設けられている場合であれ、適用通則法は 単位法律関係 ごとにまとめて規定している。
|
民 法 |
適用通則法 |
錯 誤 |
第95条 |
第7条
(第8条) |
心裡留保 |
第94条 |
詐 欺 |
第96条 |
|
また、交通事故で負傷した者が、加害者に治療費や慰謝料を請求しうるかという問題は、「不法行為に基づく損害賠償請求権の発生」に関する問題として捉える必要がある(→
交通事故によって他人を負傷させる行為は不法行為にあたる)〔参照〕。そうすれば、適用通則法第17条に従い準拠法を決定することができる。
交通事故を原因とする治療費や慰謝料の請求
|
|
不法行為に基づく損害賠償請求(単位法律関係)
|
|
第17条本文
|
|
結果発生地法
(権利侵害地法)
|
|
ナイフで人を殺害したり、他人の財物を損壊することも不法行為にあたるため、それを原因として発生した法律問題の準拠法は、前述した方法によって決定される。
逆の見方をすれば、適用通則法は、交通事故による負傷、ナイフによる殺害、または器物の損壊といった具体的な事例ごとにではなく、不法行為という法律関係(単位法律関係)について準拠法を指定していると言える。
不法行為の準拠法の決定に関して、詳しくは こちら
|