ECは、第2次世界大戦後におけるヨーロッパの平和の確立と経済発展を目的として設立されたが
(⇒ 参照)、EC条約第2条は、ECの目的として、以下の事項を挙げている(順不同)。
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EC全域における恒常的かつインフレを伴わない経済成長
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経済格差の是正
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競争力の強化
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高度の雇用水準・社会保護の達成
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男女平等の実現
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生活水準・質の向上
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高度の環境保護・改善
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加盟国間の経済・社会的結束および連帯性強化の促進
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これらの目的・目標ないし任務は、共同市場 (Common Market) と経済・通貨同盟を創設し、また、EC条約第3条〜第4条所定の政策 を実施することによって達成される(第2条)。この意味において、以下の事項もECの目的・目標ないし任務に当たると考えることができる。
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共同市場の創設
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経済・通貨同盟の創設
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EC条約第3条〜第4条所定の政策の実施
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上掲の目的・目標相互間に優越関係はない。また、これらの 目的・目標よりECの権限は生じず、ECは、EC条約が別個定める権限を、条約所定の手続に従い行使しなければならない(個別的授権の原則)。
共同市場の設立という
目的を実現するために、ECは法令を制定しうるが、市場で合法的に取引されない物品(例えば、麻薬)の輸出入に関する法令や刑罰法規の制定について、ECは管轄権を有さない(EC裁判所判決、Case
221/81, Wolf [1982] ECR, 3690)。
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EC条約第2条は、@第3条の規定の内容を明確にし、また、AECの管轄権を限定する上で(ECはEC条約によって与えられた個々の管轄権のみを行使しうる
[個別的授権の原則])重要であり、EC裁判所の判例の中でもよく引用される。もっとも、第2条は、ECの目的・目標ないし任務を列記したに過ぎず、個人が、これを根拠に裁判所に訴えを提起することは許されない。