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E U オ ン ブ ズ マ ン (EC条約第195条)



1. 任務

 オンブズマン制度は、1993年11月発効の マーストリヒト条約 に基づき創設された。オンブズマンの任務は、ECの機関ないし補助機関(組織)の不正な職務行為について調査することにあるが、同調査は、職権で、または、EU市民、EU内に滞在する自然人、またはEU内に本拠を置く法人の要請に基づき開始される(EC条約第195条第1項)。なお、市民や法人は、オンブズマンに直接、苦情を申し立ててもよいし、欧州議員を通して申し立ててもよい(同項第2款)。苦情の送り先は、フランス・ストラスブールになっている。なお、EC裁判所や第一審裁判所が司法機関として判断する事項については(例えば、すでに訴えが係属している場合など)、オンブズマンは調査しえない。

 職務不正の疑いがある場合には、オンブズマンは問題の機関に見解を求める。関係機関は3ヵ月以内に返答しなければならない。その後、オンブズマンは報告書を作成し、欧州議会と問題の機関に提出する。調査の結果は、苦情申立人にも通知される(第195条第1項第2款)。



リストマーク ECの機関の意見表明期間の短縮

 市民がEC諸機関に文書の開示を求めたが断られ、後に、オンブズマンに苦情を申し立てたケースにおいて、前述した意見表明期間は、現行の3ヵ月から2ヵ月に短縮する動きがある。これは、P. Nikiforos Diamandouros オンブズマンの提案(2004年5月)に端を発しているが、同年7月、欧州委員会は、EUの透明性の向上に貢献するとして、提案に賛成する意向を表明している。

 (参照) 欧州委員会の公式サイト

 



2. 任命

 オンブズマンは、欧州議会選挙の終了後、同議会によって任命される。その任期は、欧州議会の任期と同じであるが(5年)、再任は認められる(第195条第2項第1款)。
他方、解任については、EC裁判所のみが判断しうる参照。解任事由は、職務遂行に必要な条件が満たされなくなったか、重大な非行を犯したことであるが、同裁判所は、欧州議会の要請に基づき判断する(第2款)。

 オンブズマンは、完全に独立した立場で職務を遂行しなければならず、他の機関に意見を求めたり、また、それを受けてはならない。また、報酬の有無を問わず、任期中は、他の職に就いてはならない(第3項)。




(参照) EUオンブズマンの公式サイト