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星EUの司法救済手続     


 域内市場の創設を目標の一つに掲げるEU(厳密にはEC)は、次から次へと新しい法令を制定しているが、これによってEU市民の権利が大きく害されることも少なくない。このような場合、市民の権利保護が必要になるが、EC条約は、以下のような司法手続を設けている。


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EC第2次法無効の訴え(EC条約第230条第4項)

 ECの諸機関が制定した法令(第2次法)によって権利を侵害された者は、EC第1審裁判所に提訴し、法令の有効性を争うことができる。もっとも、この法令の影響を
「直接的」かつ「個人的に」受けていなければならない(詳しくは こちら)。

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バナナ市場規則のケース


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損害賠償請求訴訟(第235条、第288条)

 
EC諸機関やその官吏の職務行為よって損害が生じた場合、加盟国や個人は、EC裁判所または第1審裁判所に訴えを提起し、その賠償を請求することができる(詳しくは こちら)。



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ECのWTO諸協定違反より生じた損害の賠償請求

   リストマーク ECの制裁より生じた損害の賠償請求




 ところで、通常、EC法は加盟国によって執行される。例えば、EU理事会が制定した関税法に基づき、実際に関税を徴収するのは、加盟国の行政当局の任務である(参照)。また、EU理事会と欧州理事会が共同で制定した指令は、加盟国によって国内法に置き換えられた後に適用される(適用されるのは指令ではなく、国内法である)(原則)。このように、加盟国の行為が介在し、その違法性を争うときは、ECの裁判所にではなく、加盟国の裁判所に訴えを提起しなければならない。つまり、ここでは、EC第2次法そのものではなく、それを執行するために行った加盟国の措置が問題になっているため、加盟国の裁判所が管轄権を有する。このような司法救済手続を間接的救済と呼ぶが、これは、EC第1審裁判所における個人の提訴権は制限されていること(前述参照)を補う効果がある。

   リストマーク バナナ市場規則のケース

   リストマーク EC法上の裁判を受ける権利


 個人の提訴を受け、国内裁判所がEC第2次法の適法性について審査しなければならないような場合であれ、同裁判所は自ら判断を下してはならず、EC裁判所に先行判断を求めなければならない(詳しくは こちら)。
  


先行判断手続



練習問題

練習問題



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