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リスボン条約体制
 
E U の 「主 人」 と し て の 加 盟 国
  


 EU加盟国は 国際条約 (第1次法) を締結し、3つの共同体とEUを設立した。つまり、これらの組織の「産みの親」に当たるが、それらの存続、発展および運営においても、加盟国は主たる役割を果たしている。つまり、。設立に同じく、制度改革も条約の制定ないし改正を通して行われるが、その起草・締結権限は加盟国に与えられている(EU条約第48条参照)。

 リスボン条約に基づく現在のEU体制において、EUの政策目標や重要課題を決定し、EUの発展を促す最高機関は 欧州理事会 (EU条約第15条およびEUの機能に関する条約第235条以下参照)であるが、同機関は議長、加盟国首脳と欧州委員会の委員長で構成される(詳しくは こちら)。議決権のある主たるメンバーは加盟国首脳であることを考慮すると、EUの政策目標や重要課題は加盟国によって決定されると考えることができる。

 欧州理事会によって定められた政策目標や重要課題を実現するための措置は、通常、欧州議会EU理事会 によって制定される。現行制度は、両機関を対等の立法機関として扱っているが、伝統的には、EU理事会が主たる立法機関とされ、欧州議会の権限は制限されていた。なお、このような特質は、現在でも、加盟国の重大な利益に大きく関わる分野において残っている。つまり、EU理事会は加盟国の大臣級の人物で構成されるが(詳しくは こちら)、加盟国の重大な利益に大きく関わる案件については、加盟国によって決定される。

 これらの点を考慮すると、EUの「主人」は加盟国であり、EUは加盟国によって統制されるといえる。

 

 ところで、欧州議会やEU理事会によって制定された法律 (第2次法) は、通常、加盟国によって執行される。つまり、EU法を施行するのは、加盟国の役割である。この場合、EU法が直ちに適用される場合(規則 など)と、国内法に置き換えられて初めて適用される場合がある(指令)。なお、例外的に、EUの機関によって施行されることもあるが、この任務にあたるのは、主として、欧州委員会 である。



例 加盟国によるEU法の執行

 関税同盟 であるEUは加盟国の関税を統一している。例えば、第3国から輸入されるバナナの関税は、EUによって統一的に定められている。このように関税について決定するのはEUであるが、それに基づき、実際に、関税を輸入業者から徴収するのは加盟国の役割である。例えば、エクアドルからドイツのハンブルク港にバナナが到着する場合、ハンブルクの関税当局は、EU法に従い、業者から関税を徴収し、EUに収めることになる。


加盟国によるEU関税の徴収



 一般に、EU法は加盟国に対する制裁について規定していない。つまり、加盟国には自発的な履行が求められる(なお、EUの機能に関する条約第299条参照)。もっとも、加盟国がEU法に違反する場合には、EU裁判所に提訴することができる。この判決にも強制執行力はないが、任意に従わない加盟国に対しては、制裁金等を科し、履行を促すことができる(EUの機能に関する条約第260条第2項参照)。
 




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