Top      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ



 3.施行規則

 EC条約第20条第2文に基づき、EU加盟国は必要な規則を取り決めなければならないが、実際に制定された規則は国際条約であり、EC第2次法 (リストマーク 参照)ではない。また、ECではなく、加盟国に義務を課している上で(権限を与えていると捉えることもできる)、第20条第2文は特殊である。これは、外交的保護なしい領事保護は、その性質上、EUの第2の柱 (リストマーク 参照)、すなわち、政府間協力として実施されるべきであることに基づいている(EU条約第20条参照)。


 EC条約第20条(旧第8c条)は、マーストリヒト条約リストマーク 参照) に基づき導入された規定であるが、同条約が発効する前に、加盟国は、緊急時における(第3国に滞在する)自国民の保護についてガイドラインを定めている。また、同条約の発効後、以下の決定を下しているが、全加盟国による批准が滞っているため、いまだに発効していない。もっとも、実務では、暫定的に適用されている。


・  外交使節団および領事機関によるEU市民の保護(緊急時に限る)

・  領事館職員の実務に関する施行規定

・  帰国に必要な仮旅券の発行に関する規定

 これらの対象は「領事保護」 (リストマーク 参照) に限定されており、当初の期限である1993年末が経過した現在も、「外交的保護」に関する取り決めはなされていない。なお、前述したように、これらの規定は、EC第2次法ではなく、国際条約としての性質を有しているため、EU加盟国には、(EC条約第20条ではなく)国際法上の義務が課され、その履行に際しては、相互性の原則が適用される。

 第3国に滞在するEU市民のために、本国以外のEU加盟国が領事保護を行うときは、接受国にその旨を通知しなければならない。接受国がこれに異議をのべるときは、同国と交渉を行う必要があり、EC条約第20条第2文も、国際交渉について定めているが、接受国より異議が述べられたことはないため、交渉が行われたことはない。


 なお、人権保護の重要性に鑑み、EU加盟国は、第3国との領事行為に関する協力についてガイドラインを制定している(Dok. 6281/00)。これに基づき、EU加盟国の在外公館は、領事に関するウィーン条約の遵守や、死刑または拷問の執行、不当な逮捕に際し、人権条約の遵守を接受国に要請している。



  参考

Kaufmann-Bühler, in: Lenz (Hrsg.), EU- und EG-Vertrag, 3. Auflage, Köln 2003, Art. 20 EGV
 

Kluth, in: Calliess/Ruffert (Hrsg.), Kommentar zu EU-Vertrag und EG-Vertrag, 2. Auflage, Neuwied 2002, Art. 20 EGV


Magiera
, in: Streinz (Hrsg.), EUV/EGV, München 2003, Art. 20 EGV