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EU基本権憲章


権 利 ・ 諸 原 則 の 適 用 と 解 釈


第52条

 EU基本権憲章が保障する権利や自由の制限は、法律によってなされなければならないが、その本質を尊重する必要がある(第52条第1項第1文)。なお、権利や自由の制限は、比例性の原則 を遵守しながら、必要かつEUの公益に実際にかなうか、または他者の権利・自由の保護に実際に必要な場合に限り許される(第2文)。

 基本権憲章が保障する権利や自由の行使について、EU条約やEUの機能に関する条約でも定められているときは(参照)、これらの条約の規定や条件に従わなければならない(第52条第2項)。

 また、欧州人権条約でも保障されている権利は、同条約と同じ意義を持ち、また、同様に適用されるが、EUがそれより厚く保障することも認められる(第52条第3項)。なお、欧州人権条約は、欧州人権裁判所の判断に照らし解釈されなければならないとECJは述べている(See Caes C-400/10 PPU McB, para. 53)。

 

 なお、欧州憲法条約に統合される際、基本権憲章第52条(欧州憲法条約第II-112条)には第4項〜第7項が新たに設けられた。第4項は、同憲章において基本権として定められている法益が加盟国憲法でも伝統的に保障されているときは、この加盟国憲法に共通の伝統に合致するように解釈されなければならないとする。

 また、第6項は、加盟国の法規や実務は完全に考慮されなければならないことを確認している。

 これらの規定は国内法・実務を尊重するものであるのに対し、第7項は、EUや加盟国の裁判所は、基本権憲章の解釈の指標として採択されたものを十分に考慮しなければならないとする。なお、これは、EU条約第6条第1項第3款(リスボン条約体制)でも定められている。

 他方、第5項は、基本権憲章が権利ないし自由ではなく、諸原則として掲げるものは(例えば、第36条参照)、@ EUの機関・組織 が制定する法律やその実施にかかる措置、また、 A 加盟国 がEU法を実施するために発する措置によって実現されると定める(第1文)。また、これらの法律や措置の解釈や適法性について判断する場合にのみ、諸原則は裁判所において適用されるとする(第2文)。これは「司法積極性」、特に、EU裁判所による法の発展を規制する目的を持っている。



 

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