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ECのバナナ市場規則に関する法的問題


 banana  6. 加盟国の訴え

 第1審裁判所への個人のアクセスが制限されていることを補うその他の措置としては、個人は国内の裁判所に提訴する方法を指摘しうる。バナナ市場規則に従い、実際に輸入業者から関税を取り立てるのはECではなく、加盟国であるが (詳しくは こちら、この取立に対し異議を申し立てる場合は、EC第1審裁判所ではなく、国内裁判所に提訴しなければならない。なぜなら、訴えの対象は国内措置(関税の取立命令)であり、その適法性について審査する権限は国内裁判所に与えられているためである。

 もっとも、関税が不当に高いことなどを理由にして訴えが提起される場合、裁判所は、その根拠となるバナナ市場規則の適法性について検討しなければならない。しかし、国内裁判所は、EC法の有効性や権利保護の有無について判断しえない(原則)。それは、各国の裁判所がそれぞれ管轄権を有するとすれば、判断が各国で異なり、EC法の有効性・適用に乱れが生じかねないためである。そのため、EC法の適法性・解釈に関する権限は、EC裁判所にのみ与えられている(原則)。前述したように、バナナ業者が国内裁判所に訴えを提起する場合、国内裁判所(受訴裁判所)は、EC裁判所に判断を求め、同裁判所の判決に従って、みずからも判断を下すことになる(先行判決制度EC条約第234条]詳細は こちら)。

 国内裁判所への提訴は国内の訴訟手続であるため、国内法に従って行えばよい。そのため、前述した「直接的」関連性の要件と「個人的」該当性という、EC法上の要件を満たす必要はなく、裁判所へのアクセスが広く認められる。もっとも、この場合、国内裁判所はEC裁判所に判断を求める必要があるので、権利救済手続が長期化するといった欠点がある(なお、EC法の有効性や解釈問題などが明らかな場合は、EC裁判所に先行判断を求める必要はない)。また、国内裁判所がEC裁判所へ先行判決を求めるという保証はないし(詳細は こちら、仮にこれが行われるとしても、EC裁判所が個人に有利な判断を下すとは限らない。実際に、バナナ市場規則に関する事案においても、当初、EC裁判所は、権利侵害の事実を認定していなかった。ところが、後日、ドイツ連邦憲法裁判所が、権利侵害の可能性を指摘すると、それを踏襲し、ドイツ国内の裁判所は、バナナ市場規則の有効性を疑問視し、この点に関する先行判決をEC裁判所に求めた。結局、EC裁判所も、ドイツ連邦憲法裁判所の判断に従っている。