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Case C-97/96
Verband deutscher Daihatsu-Händler v. Daihatsu Deutschland
[1997] ECR I-6843
  


 1968年に制定された理事会指令(Directive 68/151/EEC, OJ 1968, L 65, p. 8)は、会社は毎年、貸借対照表を公開するものとし、その強制に必要な国内法の整備を加盟国に義務付けていた(第2条第1項第f号)。また、加盟国は、貸借対照表が開示されない場合について、適切な制裁措置を設けなければならないとした(第6条)。この規定に従い、ドイツは商法を改正し、ある会社が年度貸借対照表の公開を拒む場合、裁判所は罰金を命じることができるが、この手続は、会社の出資者、債権者または労働者委員会(Betriebsrat)の申し立てによって開始されると定めた(第335条第1文第6号)。

 ダイハツのドイツ法人(Daihatsu Deutschland GmbH)は1989年より年度貸借対照表を公開していなかったため、ダイハツ車のディーラー団体(Verband deutscher Daihatsu-Händler)が、前掲のドイツ商法に基づく強制手続の開始を申請したところ、簡易裁判所はこれを却下した。また、控訴審である地方裁判所も、ドイツ商法第335条第1文第6号によれば、会社の出資者、債権者または労働者委員会(Betriebsrat)にのみが強制手続の開始を申請することができ、ディーラー団体はこれに該当しないとして請求を退けた。これを不服とし、ディーラー団体が高等裁判所に上告したところ、同裁判所は、@ 前掲のドイツ商法第335条第1文第6号はEC指令第6条を適切に置き換えているか、また、A 置き換えていないとする場合、指令第6条が直接的に適用されるかという問題の判断をEC裁判所に求めた(先行判断手続)。

 @の問題について、EC裁判所は、指令内のその他の規定や後に制定された指令の趣旨を考慮すると、貸借対照表の開示請求は、利害関係を有するすべての者に補償されなければならないとし、ドイツは指令を適切に置き換えていないと判断した(paras. 13-23)。

 また、Aの問題(指令を直接援用し、裁判所に強制措置の発動を申請しうるか)については、指令に基づき、個人に直接、義務を課すことはできないため、本件のようなケースでは、個人は指令を援用しえないとした。このような判断に基づき、EC裁判所は、本件の指令第6条が直接的効力を有するかどうかについては判断していない(paras. 24-26)。







(参照) 指令の直接的効力