E U 法 秩 序 に お け る 法 の 支 配


 ECEUの重要事項(例えば統治機構、ECの権限、政策の基本方針など)は、それぞれ諸条約(第1次法)内で明定されている。換言すれば、欧州諸共同体や欧州連合は、条約に基づき設立され、また条約内の規定に従ってのみ、政策を遂行することができる。さらに細かな事項は、新たに法令を制定し、定めらる(第2次法の制定)。この意味において、ECおよびEUは、「法的共同体」ないし「法的連合」と呼ぶことができる。これは「法治国家」に相当する概念である。

 ECの諸機関が、第1次法や第2次法に違反して、法令を制定したり、政策を実施する場合は、その無効確認をEC裁判所に求めることができる(EC条約第230条ないし第231条)。また、加盟国がEC法に違反する場合も同様に、EC裁判所に提訴しうる(第226条~第228条参照)。同裁判所によって、加盟国のEC法違反が確認されると、加盟国はその判断に従い、EC法違反を除去しなければならないが、それがなされないときは、欧州委員会は(再度)EC裁判所に提訴し、制裁金額の決定を求めることができる(詳しくは こちら)。

 なお、EC法上の義務の遵守は絶対的である。そのため、加盟国間で義務違反を容認しあったり、また、他の加盟国が義務を履行しないならば、自らもこれを行わないとすること(相互性)は禁止される。加盟国やECの違法行為に対して、個人は裁判所(国内裁判所やEC第1審裁判所)に訴えを提起し、その無効確認を求めることができる(EC条約第230条第4項参照)。このように、相互性の原則が適用されないこと、また、個人に訴権が与えられている点で、EC法は、他の国際法に比べ規範力が強いと言える。


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