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EUの旗 2005年10月のEU加盟国首脳会議

 当初、イギリス政府(現EU理事会議長国)は、2005年10月27・28日にEU加盟国首脳会議を開催し、社会モデルの見直し (経済発展と社会政策の調和)について協議する計画を立ていていたが、10月10日、首脳会議は、27日にのみ実施すると発表した(参照)。また、加盟国間で見解が大きく異なる 社会モデルの見直し (経済発展と社会政策の調和) は議題から削除され、代わりに、国際化(市場の開放)とEUの競争力について協議することになった(参照)。これは、欧州憲法条約次期財政計画 が暗礁に乗り上げ、危機的ムードが漂っていることを踏まえた判断であると解されている(参照)。Blair 首相は、10月の首脳会議が再び物別れに終わることを避けるとともに、くつろいだ雰囲気をかもし出し、加盟国間の結束力を内外に示すことに務めることになろう。


         リストマーク 首脳会談の結果



  リストマーク 欧州委員会の提案

 首脳会議に先立ち、欧州委員会は "European values in the globalised world" と題する報告書を提出している。その中で、国際化や市場の開放の影響を受けるEU市民を救済するために、Globalisation Adjustment Fund という新しい基金を設けることを提案している(13頁)。Barroso 委員長 によれば、同基金の規模は、約35億ユーロになるが(参照)、これは、サービス市場の開放に反発しているEU市民(特に、フランス国民)の不安を和らげることを意図したものと解される (参照)。なお、かねてより自由化に賛成している Blair 首相はこの提案に賛成しているとされている(参照)。

 Barroso 欧州委員会の最大の課題とされる雇用の創出(参照)については、所得税を引き下げ、代わりに、消費税を引き上げる必要性が指摘されている(11頁)。労働市場を活性化させるために所得税を下げ、他方、拡大する社会保障費を賄うために消費税を引き上げる提案は、2005年9月の国政選挙 において、Barroso 委員長に同じく保守系政党であるドイツ・キリスト教民主同盟(CDU)が提唱していた。同党の Merkel 党首が次期首相に内定していることから、ドイツでは委員会案に沿った税制改革が行われる可能性が高い。EU経済の発展には、ドイツ経済の再生が重要であることから、新政権の政策に注目が集まっている。




(参照)

UK Presidency の公式サイト

European Commission, "European values in the globalised world"

Die Presse v. 21. Oktober 2005 (Noch mehr Markt, aber kein Schmerzensgeld)

Die Prese v. 22. Oktober 2005 ("Feel-Good-Gipfel" des Männerbundes)

Die Welt v. 22. Oktober 2005 (Blair will Globalisierungs- Verlierern in Europa helfen)


2005年10月の首脳会談(結果)




(2005年10月23日)