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2008年6月の欧州理事会 最終決議



 2008年6月19・20日、ブリュッセルで定例の欧州理事会(EU加盟国首脳会議)が開催された。当初は、地球環境問題、エネルギー政策、また、原油や食料品価格の高騰などが議事録に掲げられていたが、約1週間前に実施された アイルランド国民投票 の結果を受け、主要議題が入れ替わることになった。


1.リスボン条約の批准

 2008年6月12日、アイルランド国民はリスボン条約の批准を否決する決定を下し、ヨーロッパ中に大きな衝撃を与えた(詳しくは こちら)。対応策については、すでに様々な見解が主張されているが(詳しくは こちら)、欧州理事会は現時点での判断は時期尚早であるとし、2008年10月15日に開催予定の次期会合で再協議することにした。他方、批准手続は継続されるべきとし、条約の重要性を確認した。なお、チェコは批准を見送る可能性があることが脚注内で定められた(詳しくは こちら)。


2. ガソリン、石油、食料品価格高騰への対策

 ガソリンや石油、また食料品価格の高騰を受け、欧州理事会は、次期議長国であるフランス や欧州委員会に対し、投機に関連した金融市場の動向や価格の変動を監視し、また、2008年10月の会合で対策案を提示するよう要請した。会議に先立ち、欧州委員会は対策を提案していたが(詳しくは こちら)、その審議も持ち越された。

 なお、次期議長国のフランスは、ガソリン税の引き下げを提唱していたが、減税が実施されても、供給業者が価格を引き上げれば、消費者の負担は緩和されないとして支持されなかった。その他、投機への課税(オーストリア)や、原油高騰の被害者を救済するために新たな税(ロビン・フッド税)を導入する案(イギリス)も出されたが、対策は加盟国によって決定されるべきであるとし、EUレベルでの政策決定に反対する加盟国もあった(ドイツ)。


3.スロバキアのユーロ導入

 2009年元旦より、スロバキアにもユーロが導入される。これによりユーロ圏は16ヶ国に拡大する。なお、2004年5月以降にEUに加盟した12ヶ国の中では、すでに、スロベニア、キプロスおよびマルタがユーロを導入している(詳しくは こちら)。



4.西バルカン半島政策

 旧ユーゴスラビア連邦から独立したスロベニアは、西バルカン半島の安定化について特に強い関心を持っており、理事会議長国期間中の重要課題の一つに挙げていたが(参照)、欧州理事会は、旧ユーゴスラビア構成国のEU加盟を最終的な目標に据え、諸国の安定化と制度改革を支援する従来の方針を確認した。また、アイルランドの国民投票でリスボン条約の批准が否決されて以来、EU拡大を抑制する見解も主張されているが(詳しくは こちら)、西バルカン半島の安定化には、EU加盟の見通しを与えることが重要であるとする従来の立場が確認されている。





Link 議長国の公式サイト(英語)


スロベニア議長国期間中の主要課題


2008年6月19・20日の欧州理事会

 ・ リスボン条約の批准について

 ・ リスボン条約とEU拡大について


石油価格の高騰に対するEUの政策(欧州委員会の提案)