Top      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ



スウェーデン国旗

ユーロ導入に関するスウェーデン国民投票

    

 夏でも、秋でもないこの時節、EUの「台風の目」は、スウェーデンの国民投票かもしれません。ユーロ導入の是非を問う国民投票は、2週間後に迫ってきました(9月14日実施)。新通貨に対する不安や、一頃のユーロ安は、もう過去の話。自国通貨との別離は、去り行く夏を惜しむ気持ちとは比較にならないほど哀愁をそそりますが、冷静な判断が必要ではないでしょうか。北欧の暑い夏はもうしばらく続きそうです(9月1日記)。

   国民投票に関するスウェーデン大使館のサイト(日本語)
   反ユーロ派の優勢を伝える報道(日本語)


 [追記] 2003年9月11日、ユーロ導入キャンペーンの立役者である Anna Lindh 外相が刺殺されたことによって、国民投票は思わぬ方向に展開しましたが、当初の予想通り、反対派が過半数を占めました(反対票 56.2%、賛成票41.8%)。EU加盟(1995年元旦)を決する際も、両陣営の勢力は拮抗していましたが、北欧の国民はブリュッセル主導の欧州統合になおかつ強い抵抗を抱いていることが今回の国民投票で浮き彫りになりました。「我々はすでにこの痛み(自国通貨との決別)を克服したのに」との感を他のEU市民は持っているようですが、ユーロの安定化基準を無視する大国(独仏)の態度が新通貨に対する懐疑心をかきたてていることも見過ごしてはならないと思います
参照 (9月15日記)。

 ユーロ導入見送りの責任は独・仏にあるとするスウェーデンの見解に関する記事(ドイツ語)


 なお、Lindh 外相は、2003年9月10日、首都ストックホルムのデパートで、同僚の女性と2人で買い物している最中に殺害されました。数日後、セルビア移民の Mijailo Mijailovic 青年が自主してきました。一旦は精神障害者として釈放されますが、2週間後、同青年は母親宅で逮捕されています。その後、犯行を否認するようになりますが、刑事裁判手続では、内なる声(セルビア語)を聞き、外相を刺殺するに及んたと自白します。第1審裁判所は無期懲役刑を言い渡しましたが、2004年6月、控訴裁判所は同青年を精神病患者に認定、無罪としてしています。9月に入り、この事件は上告されることになりました。

 事件当時、Lindh 外相は、警護なしで買い物をしていましたが、政治家と市民の触れ合いを重んじるスウェーデンでは、首相以外にはボディー・ガードは付けられません。また、この事件にもかかわらず、後任の外相にも警護は付けられていません。ユーロ導入の是非を問う国民投票は、国是を決する上で極めて重要でしたが、同国に3年以上居住するならば、外国人にも投票権が与えられていたことも、この国の開放性を表しています。もっとも、単一通貨の導入を否決することで、EUに対しては被閉鎖的な態度を示したとも解されます。