ドイツと商品パッケージ規則 |
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「環境にやさしい国」で知られるドイツ。1998年秋、「緑の党」が政権を掌握して以降
(ドイツ社民党との連立政権)、環境保護政策は加速されるようになりましたが、目下の課題は、ダンボールの回収・再利用、また、大量に消費されるワインの空きビン回収を効率的にすることでしょうか。
他方、我が国でも問題になっている炭酸飲料水の空き缶については、今年より、すでに保証金(Pfand)が課されています。例えば、コーラや炭酸入り果物ジュースを購入する際には、デポジットを併せて支払わなければなりません。もっとも、ビンや缶を返却すれば、その金額は払い戻されます。これは、日本でも一般に行われていることですが、違う点は、ドイツでは、@ミネラル・ウォーターやビールなどを除けば、この制度は、炭酸飲料水の容器にのみ適用されることと、Aビンだけではなく、缶にも保証金を支払わなければならないことです。
対象となる飲料水
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ミネラル・ウォーター |
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ビール(アルコールを含まないものも含む) |
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炭酸飲料水 |
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保証金の額は、1.5 リットルまでの容器の場合は、25 セント、それを超える量の容器の場合は、
50セントです(2003年10月1日現在、それぞれ約33円、65円)。
これに対し、炭酸を含まないジュース、紅茶、スポーツ・ドリンク、ワイン、コーヒーなどのビン・缶には保証金
(Pfand) の支払いが法律によって義務付けられているわけでありません。牛乳の場合も同じです。 |
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さらに、B経過措置として、使い捨ての空きビンや缶は、買ったお店に返却しなければならないものとしました。これは、回収を請け負う小売店の負担を和げるための措置です。そのため、例えば、ドライブ中にガソリン・スタンドで買ったコーラの缶を近所のスーパーに返却することはできません。これは、消費者にとって非常に不便な制度ですが、実は、販売業者にとっても煩雑な処理を要求します。なぜなら、企業は、自らが飲み物を販売したことを証明するものを発行し、また、それを確認して回収する必要があるためです。このような手続が不可能なため、自動販売機で炭酸飲料水やビール、ミネラル・ウォーターを買うことはできなくなりました。
かねてより、EUは、商品パッケージの再利用に関する法律(欧州議会とEU理事会の指令
[94/62/EC, OJ 1994, L 365, p. 10] )を制定していますが、上述したドイツの空きビン・缶回収制度は、このEU法を執行するために導入されました。しかし、Bの移行措置は、他のEU加盟国の販売業者を差別し、EU域内市場における公正な競争を阻害するものとして批判されることもありました。特に、欧州委員会は、今年の10月1日までに移行措置を廃止するよう要請し、それがなされなければ、EC裁判所に提訴するとしてきました(
欧州委員会による告訴) 。それを受け、ドイツは、9月末でもって移行措置を廃止し、10月1日からは、どの販売業者・小売店に返却してもよいことにしました。もっとも、新制度への移行はスムーズに行われていません。これは、他者が販売した飲料水の空き缶の回収に業者は積極的ではないからです。環境だけではなく、消費者にもやさしい制度の実施には、まだまだ時間がかかりそうです。
(追記) 2003年10月21日、欧州委員会は、上記の改正にもかかわらず、ドイツの空きビン・缶回収制度は他の加盟国の業者を差別するものとし、EU法違反調査手続の続行を決めました。同委員会によれば、ドイツの制度は、使い捨て容器の使用が一般的な外国企業を不当に差別するものとされています。
[参考] Welt Zeitung (ドイツ語)
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