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2004年6月10日〜13日

欧 州 議 会 選 挙


 2004年6月、欧州議会選挙が実施される。具体的な投票日・時間および開票日・時刻は、各EU加盟国によって定められるが参考、6月10日、イギリスとオランダで実施されるのを皮切りに、6月13日までの期間に、全EU国で選挙が行われる。なお、ほとんどの加盟国では、13日(日)が投票日に指定されている。


    リストマーク 選挙日と選挙結果の公式発表時期



 2004年5月1日、新たに10か国が EU に加盟したが 参照、今回の欧州議会選挙には、新加盟国の国民も参加することになり、総計、約3億4200万のEU市民に投票権が与えられる。この大規模な選挙によって、732人の欧州議員が選出されることになるが、当選者は、5年間にわたり、EUの政策決定に関与することになる。



各国の議席配分 有権者 選挙法
予測 結果 欧州議会の権限



 従来より、選出された議員は、出身国を問わず、広く EU 規模で党派を結成し活動しているが参考、本年 2月、各国の自然保護政党(緑の党)は、統一政党を結成し、共通の公約・テーマを掲げ、選挙にのぞむことを決定した参考。これは欧州議会選挙史上、初の試みであるが、欧州議会が EU 市民の意見をより強く反映した「民主的統制機関」に発展する好機である。なお、この場合であれ、「EU緑の党」というような統一政党の形で選挙に参加しているわけではないため、有権者は、自国の政党に一票を投じることになる。EC条約は、複数の加盟間にまたがる政党(欧州政党 参考)の結成を奨励しているが、そのような政党が欧州議会選挙に参加するのは、2009年の次回選挙以降になるものと想定される。     




星 欧州議会は世界で最も評価されていない議会?
  〜 EU市民の関心の低さ 際立つ 〜

 EU拡大に伴い、欧州議会選挙の有権者は、3億4200万に膨れ上がり、インドに次いで、世界中で2番目に大規模な選挙となった。また、選出される議員数(732人)の点においても、非常に大規模な選挙といえる。

 しかし、EU市民の関心は決して高くない。また、投票率も低下傾向にあり、前回、1999年のイギリスにおける投票率は、わずか20%前半であった。加盟国の中には、同時に国政または地方選挙を実施し、投票率の維持・上昇に努める国もあるが、その効果は決して大きくない。ドイツでは、今回も地方選挙が同時に実施される予定であるが(なお、実施されない地方もある)、しかし、投票率は45%強に過ぎないとされている。

     リストマーク 従来の投票率


 市民の関心が低い理由としては、以下の点が挙げられる。

欧州統合そのものに対する市民の意識が低い。また、EU政治は複雑で、市民に身近な存在であるとは言えない。


欧州議会選挙で政治が変わるものとは考えられない。

欧州議会の立法権限は弱く、重視されていない。
 
  リストマーク 参照

明確な選挙テーマが示されていない。また、候補者は政治的に無名である。つまり、政党側の関心も低く、激しい選挙戦が展開されない。


 ドイツでは、政権政党の「緑の党」は、国レベルでの選挙PR に熱を入れており、他の政党にも選挙戦の「盛り上げ」を呼びかけているが、反応は弱い。ドイツに限らず、他の加盟国でも、大規模な選挙活動は実施されない傾向にあるが、これは、政党によっては、欧州統合の推進は必ずしも党是に一致しないことなどに基づいている。



欧州議会選挙の独自性がない。つまり、EU独自の問題が選挙テーマに上がることは少なく、主として、国内問題が争点になる。また、各政党は国内選挙の前哨戦と捉えている。

 このような背景下、ドイツの小政党 FDP (自由民主党)の最上位候補者である Koch-Mehrin は、欧州議会は世界で最も過小評価された議会と見ている。
 

(参照) Parteien droht bei der Europawahl ein Fiasko, Die Welt v. 11. Juni 2004

EU法講義ノート (サンテール欧州委員会の辞任と欧州議会制度


(2004年6月13日更新)



 


星 主な選挙テーマ

 本来、欧州議会選挙では、EUに関する事項が論点となるべきであるが、もっぱら国内問題が選挙テーマとして取り上げられる。また、明確な争点が示されず、政党間で「イメージ合戦」が展開されると見ることもできる。

 他方、トルコのEU加盟を認めるか、また、欧州憲法(条約)は国民投票にかけるべきかどうかが問われることもあった。

 なお、ドイツでは、2004年4月17日より、インターネット上で、自分にあった政党を探し出すシステムが利用できるようになった。これは、Wahl-O-Mat  と呼ばれる Internet Tool で、ドイツの公的機関 (Bundeszentrale für politische Bildung, ZDF など) や、欧州議会のドイツ情報センターによって作成された。全部で30からなる、アンケート形式の選択問題に答えていくと、どの政党に一票を投じるべきかが分かるようになっている。なお、最初の問題は、「トルコのEU加盟を認めるべきか」である。このプログラムは、オランダで開発され、ドイツでは、2002年の連邦議会選挙時より導入されているが、特に、支持政党を持っていない若者に有益であるとされている (参照 ZDF) 。


    リストマーク トルコのEU加盟 (ドイツ)


 
(2004年6月13日 更新)




(参考)
 欧州議会の公式サイト(英語)
     欧州議会ドイツインフォメーション・センターの公式ホームページ (ドイツ語)
 ドイツ政府・欧州議会・欧州委員会によるホームページ (ドイツ語)

 欧州議会選挙に関する法令 (ドイツ語)

 
(2004年6月14日 更新)