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ドイツ国旗    2003年は独仏友好の年    フランス国旗


 来年のカレンダーをめくるのは、まだ2月も先のことだが、早々に今年を振り返ってみると、2003年は独仏の友好関係が一段と強化された年といえるであろう(Schröder 独首相同旨)。100年来の敵対関係を解消すべく、両国間に友好条約(エリゼ条約)が制定されたのは、1963年1月22日のことであったが、今年は、各地で、制定40周年を祝う式典が開かれた。イラク戦争に際しては、両国は、米英の方針に反対の立場を表明してきたし、その協調路線は、戦後の復興支援に関しても継続している。また、欧州憲法(条約)草案の検討にあたっても、団結してその支持を訴えており、10月の欧州理事会では、Chirac 仏大統領が Schröder 独首相の見解を代弁するといったことまで生じた。

 これらの 「上からの」政策調整だけではなく、地域間でもこれを推進するため、今年10月27、28日には、独仏地域間会議が初めて開催された。開催地となった Poitiers (人口わずか8万人の地方都市で、Raffarin 仏首相の故郷)には、ドイツの16の連邦州、また、フランスの22の地域圏より代表が派遣されてきたが、新しい制度の発足という晴れやかな場であるだけに、独仏の首脳・閣僚も姿を現した。そして、深刻化しつつある財政赤字問題も議案にのぼり、確かに、ユーロ安定化基準の遵守は必要であるが、両国は、自国だけではなく、ユーロ圏全体の経済発展に責任を負っているとし、景気刺激策(そのために財政赤字が膨らむ)の必要性を指摘している。両国の財政赤字は、来年度もGDP比の3.0%を上回る見通しであるが、マーストリヒト条約締結の際に定められた基準の遵守について審議するEU理事会の開催を前に、他の加盟国をけん制する意義があるものと解される( ユーロ安定化基準の遵守について)。

 このような背景の下、独仏地域間会議の当面の重要課題は、地域経済の発展に置かれていると解されるが、@そのために必要なパートナー国の言語(ドイツ語、仏語)教育に力を入れ、A青少年や教員の交換(留学)制度を促進すること、また、B会社、大学、研究機関等のネットワークの構築が政策プログラムに挙げられている。

 地域ないし地域間協力の重要性は、欧州統合過程でも強く認識されており、独仏間の新制度はこれに合致するものである。他方、中央政府レベルでの政策協調も、EU拡大に向け、ますます強化されるものと解される。


 (参考)独仏地域間会議に関する記事
  会議の開催に関して (ドイツ政府 [ドイツ語])
  会議後の公式声明 (ドイツ外務省 [ドイツ語] [フランス語]) 
  ユーロの安定化基準に関する政府首脳の見解 (Die Welt [ドイツ語])
  独仏両国の協力について (ドイツ外務省 [ドイツ語])
独仏の協力関係




  エリゼ(Elysée)条約

 長年にわたる独・仏間の対立を解消して両国間に友好関係を構築し、外交、軍事・防衛や教育・青少年制度に関する政策調整ないし共同作業の実施を目的とし、1963年1月22日、パリにおいて、de Gaulle 仏大統領と Adenauer 独首相によって締結された条約。正式名称は、1963年1月22日のドイツ連邦共和国およびフランス共和国間の独仏共同作業に関する条約(Vertrag zwischen der Bundesrepublik Deutschland und der Französischen Republik über die deutsch-französische Zusammenarbeit vom 22. Januar 1963)である。

 同条約に基づき、@最低年2回の首脳会談、2ヵ月または3ヵ月毎の関係閣僚(外相、軍事・防衛相、教育・少年問題担当大臣)の会合が制度化され、また、A行政機関間の情報交換が制度化された。


    (参考)
         
条約文  (ドイツ外務省 [ドイツ語])
              エリゼ条約制定40周年に関する記事
             ・ ドイツ外務省 (ドイツ語)
             ・ 在日フランス大使館 (日本語 )
エッフェル塔