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 欧州憲法草案 採択される


 2004年6月17日〜18日、欧州理事会がブリュッセルで開催され、主に、@ 欧州憲法草案の採択と、A 次期欧州委員会委員長候補の選出について協議された。17日の会合では、Aの人選問題について仏独とイギリスが対立し、決定は先送りされたため、議長国アイルランドの Ahern 首相は、欧州憲法に関する18日の会議も難航するであろうと述べていたが、他の加盟国政府の中にはすでに楽観論が漂っていた。実際に、議長国アイルランドが示した妥協案におおむね沿う形で全EU加盟国の意見がまとまり、憲法草案は採択されることになった。結果的に、昨年6月に制定された草案には多数の修正が加えられることになったが
参照、主な内容は以下の通りである。


@ EU理事会の立法手続

 2003年12月の欧州理事会では、特に、スペインとポーランドが憲法草案に反対し、ニース条約規定の存続を訴えていたが、その後、両国では政権が交替し、いわゆる「二重の多数決制度」を導入することで歩み寄りがみられた 参照。もっとも、その詳細については争いがあり、早々に議長国アイルランドの妥協案も示されたが、今回の協議では、少なくとも60%の加盟国の賛成が必要であるとする見解がチェコを中心とする加盟国より出されることになった。同案によると、中小国が法案の採択を阻止する可能性が高まる。結果として、アイルランド案に落ち着いたが、中小国の意見も取り入れられ、拒否権が認められることになった。つまり、2009年11月より、EU理事会は、55%の加盟国が賛成し、これらの国の国民が、全EU市民の65%に相当するときに法律を制定しうることになるが、4か国が拒否権を行使すれば、法案の採択は見送られる。

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立法手続について


 なお、経済・通貨政策や、欧州委員会の権限が制限されている分野(例えば、EUの第3の柱 )など、加盟国の利益に大きく関わる分野では、加盟国の72%が賛成し、同国の国民がEU市民全体の65%に相当していなければならない。

 さらに、租税政策や 外交・安全保障政策 の分野においては、従来どおり、理事会の全会一致が必要とされる。


A 欧州委員会の構成

 アイルランド案に従い、2014年までは、各国より1人、欧州委員会のメンバーが選任されるが(Article I-25 (3) )、その後は、加盟国数の3分の2に相当する数に削減されることになった。27か国体制に発展するとすれば、欧州委員会の構成員は18人となる。メンバーは、各国の人口や面積を考慮しながら、平等に互選される。

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欧州委員会の構成について


 なお、欧州委員会副委員長は、外交問題を専門に担当する、いわゆる「EU外相」となる。



B 前文における「神」への言及

 ポーランドが最後まで反対していたとされるが、草案と同様に、「神」への言及は見送られた。


C 経済安定・成長協定

 加盟国の過剰な財政不均衡をコントロールするため、憲法草案に盛り込まれていた制度は、特に、ドイツの強い反対を受け、弱体化された。つまり、欧州委員会は、財政赤字が著しい加盟国に対し、法的拘束力のない勧告を発することができるが、加盟国は特定多数決にて、この措置を覆しうる。また、オランダの強い抵抗にもかかわらず、EC裁判所による司法統制も見送られた。


  リストマーク 欧州憲法の詳しい内容については こちら


   (参考) 欧州委員会の公式サイト
FAZ
tagesschau.de

(2004年6月19日 記)