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 政府間協議における欧州憲法制定条約草案の検討

1.政府間協議の開始 (2003年10月4日、ローマ)

 20036月、フランスの元大統領ジスカール・デスターンGiscard d’Estaingを座長とする協議会(Convention) によって、欧州憲法草案が起草された( 欧州憲法について)。これを受け、草案の内容について審議するための加盟国政府間協議が、2003年10月4日、ローマ郊外において開始された。ちなみに、同協議の会場は、1930年代、ムッソリーニの指示によって建設された市街地の一角にある。


 今回の政府間協議における主たる争点は以下の通りである。

 @ 欧州委員会の構成
 A EU理事会の立法手続における議決制度
 B 外交政策と租税に関する立法手続(全会一致制度)
 C EU大統領の任命
 D 憲法前文において、神について触れること


 政府間協議は、現在、EU理事会議長国を務めるイタリア政府の主導下で進めら、同政府は、その任期が終了する12月末までに憲法制定条約を制定したいと考えているが、その実現は難航するものと思われる。なぜなら、決議には、全加盟国の同意を必要とするからである(これに対し、草案は、決議を経ることなく採択された。 つまり、全出席者の賛成が得られているかどうかに関する判断は、
ジスカール・デスターン座長に一任された)。もっとも、来年5月1日に予定されているEU拡大や、同6月の欧州議会選挙の前に作業を終了することが望ましいとされている。欧州憲法は、EU条約やEC条約の改正、すなわち、EUの機構・制度改革を目的としており、これがなされなければ、EU拡大にも支障がでるものと解さている。


     政府間協議の声明(議長国の公式サイト) (英語)


 なお、政府間協議には、2004年5月に新規加盟が予定されている10国 と、ブルガリア、ルーマニアおよびトルコも参加しています(後書き: 10か国のEU加盟は予定通り実現しました)。


2. ブリュッセルにおける欧州理事会 (2003年10月16〜17日)

 2003年10月16日から17日にかけて、ブリュッセルにおいて、欧州理事会(EU加盟国首脳会議  この機関についてはこちら)が開催され、欧州憲法草案の趣旨が確認された。  

  

ブリュッセル欧州理事会の最終決議(公式文書) (ドイツ語)

ドイツ外務省の公式ホームページ (ドイツ語)

        



 ◎ 欧州憲法条約の批准手続

 前述したように、欧州憲法は条約という形で制定される予定である。その発効には、全EU加盟国による批准を必要とするが、批准に先立ち、各国では国民投票を実施すべきとする見解が有力になりつつある。その背景には、今年に入り、中・東欧諸国ではEU加盟の是非を問う国民投票が相次いで実施されており、時代の流れに即しているといったこともあるが、国民に直接、支持を求めることにより、欧州統合の基盤を強固にすることが、その主たる目的である。その反面、直接民主制は、EUの発展を阻む要因にもなりかねない。例えば、マーストリヒト条約の批准に際し実施された国民投票において、デンマーク国民が示した懐疑的な態度は、EU統合にブレーキをかけた(参照)。また、ニース条約の発効が滞ったことも、アイルランドにおける国民投票の結果が原因となっている(参照)。ちなみに、スイスは、まだEUに加盟していませんが、これも国民投票でEU加盟案が(幾度となく)否決されているためである。欧州憲法(条約)の批准に際しても、国民投票が実施されることになれば、早期(2004年4月末まで)の条約発効という目標は、実現が困難になると解される。なお、欧州憲法によって各国の憲法が大幅に改正されることはないと考えられるため、法律上、国民投票は必ずしも必要ではないと考えられる。

  

欧州憲法条約の批准手続




   (参考)

EUの公式ホームページ (英語)

ドイツ外務省の公式ホームページ (ドイツ語)