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欧 州 議 会 に よ る 欧 州 委 員 候 補 の 審 問 手 続 (続 編)


リストマーク Rocco Buttiglione 委員候補

 2004年9月27日から10月11日にかけて、欧州議会は、24人の新欧州委員候補を審問したが(EC条約第214条第2項参照)、10月12日、議会は、委員候補の承認を拒む判断を初めて下した参照。否認されたのは、司法・内務問題担当予定の Rocco Buttiglione 氏であるが、カトリック教徒としての立場から、同氏は、「宗教上、同性愛は罪である」と述べた。もっとも、このような考えが政策に影響を及ぼすことはないと断定した。また、同性愛は犯罪に該当せず、性的指向に基づく差別は許されないことも確認した。なお、Buttiglione 氏は、カトリック教国イタリアの出身であり、ローマ法王に進言することもあるとされる。

Buttiglione 委員候補

Buttiglione 委員候補


 この発言の他、"marriage" (結婚)という単語は、「母親の保護」という意味のラテン語に由来しており、結婚とは、女性が子を持ち、また、男性の保護下に入ることを指すとする言明や、とりわけ母国イタリアに庇護申請者(亡命者)が押し寄せていることをも踏まえた上で、収容施設を北アフリカに設けるべきと述べたことが欧州議会内の市民の自由・司法・内政部会の反発を招いた。 保守会派に属する議員は、Buttiglione 氏の就任を支持したが、社会党派の議員らの反対がこれを上回り、27票対26票の僅差で承認は見送られた。なお、欧州議会は、最終的に、委員候補をまとめて判断しなければならず、特定の候補のみを否認することはできない参照

 Barroso 次期委員長(内定)は、この決定を重視し、Buttiglione 氏ではなく、別の委員候補を立てるよう、イタリア政府に要請したり、また、その担当政策分野を、例えば、エネルギー政策など、政治色の薄い分野に変更することも可能である
。Buttiglione 氏は、2001年5月より、Berlusconi 内閣でEU担当大臣を務めているが、Berlusconi 内閣より、司法・内務担当委員が選出されること自体に反対している社会党派ないし自由党派議員も存在する。もっとも、担当分野が変更される場合であれ、欧州議会内の部会は、同氏の就任を了承していない参照。なお、Barroso 委員長候補は、10月21日、欧州議会の各党派の長と会談を行った後に判断するものとみられている。


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Buttiglione 氏の管轄分野 削減へ


 2004年10月21日、Barroso 次期欧州委員長(内定)は、Buttiglione 氏が委員候補であることに変わりがないと発表した。もっとも、同候補の担当分野から基本権や差別禁止・撲滅に関する案件は削除され、これらは、Barroso 委員長(内定)の監督の下、委員グループ( Wallström 委員候補と Ferrero-Waldner 委員候補)の共同管轄に移されることになった。これは、同性愛は宗教上の罪であるとする Buttiglione 氏が欧州議員によって激しく批判されたことを受けた措置であるが、同氏が Barroso 委員長(内定)に宛てた手紙の中では、自らの発言に対する遺憾の念と、また、同性愛者を差別する意図はなかったことが強調されている。この書簡は、インターネット上でも公開されている参照なお、この人事にもかかわらず、欧州議会内の社会党派、自由党派、また、環境保護政党派は、10月27日の議決では、委員会の承認を拒む姿勢を変えていない。


(参照) Der Standard v. 21. Oktober 2004 (Buttigliones Ressort wird beschnitten)

(2004年10月22日 記)


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 2004年10月27日、Barroso 新欧州委員長(内定)は、欧州議会による一連の批判を考慮し、退陣を表明した参照。また、批判の矢を浴びされていた Buttiglione 氏は、10月30日、委員候補を辞退する旨を明らかにした参照





リストマーク
László Kovács 委員候補

 Buttiglione 氏の承認が見送られた翌日、欧州議会の産業・研究・エネルギー部会は、László Kovács 委員候補(エネルギー政策・原子力安全政策)の承認を否決した。その理由として、元共産党員である Kovács 氏のエネルギー政策に関する知識の決如が挙げられているが参照、真の理由は、前日の決定に対する保守会派の「復讐」とも解されている参照


Kovacs 委員候補

Kovács 委員候補



 


リストマーク Neelie Kroes 委員候補

 前掲の両氏の他に、Neelie Kroes 委員候補(競争政策)についても、現在、企業の執行役員の職にあることから、職務の中立性ないし公平性が問題視されたが、欧州議会の経済・通貨問題部会は Kroes 候補を了承した参照。なお、現職の Monti 委員も同様の経歴を持つ参照

Kroes 委員候補

Kroes 委員候補


 
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Kroes 委員候補の決定権 制限


 2004年10月21日、Barroso 次期欧州委員長(内定)は、Kroes 委員候補が、従来、ビジネス・ウーマンとして携わったことのある案件に関しては、決定権や捜査権を行使しえないと発表した。



(参照) Der Standard v. 21. Oktober 2004 (Buttigliones Ressort wird beschnitten)

(2004年10月22日 記)



 

(参照) Die Welt v. 13. Oktober 2004 (Barroso gerät unter Zugzwang)
Die Welt v. 13. Oktober 2004 (Bauernopfer der Berlusconi-Feinde)
FAZ v. 13. Oktober 2004 (Barrosos Team zeigt Schwächen)

 Barroso 新欧州委員会 就任前に退陣


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(2004年10月16日記 10月22日 更新)