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EU・USA、飛行機旅客個人情報の提供で合意


 2006年9月30日、飛行機旅客の個人情報提供に関するEU(EC)・米国間の協定は失効し、法の欠缺状態が続いていたが(詳しくは こちら)、10月5日から6日早朝にかけて行われたビデオ・コンファレンスにおいて、欧州委員会は米国当局との合意を締結するにいたった(参照)。 交渉結果について、EU加盟25ヶ国のEU大使はすでに了承しているとされるが、今後、EU側は、EU理事会による承認を経て新協定の締結準備を進めるものと解される (参照) 。2006年5月、EC裁判所は旧協定締結の法的根拠を否認しているため(詳しくは こちら)、どのような形で協定が締結されることになるか注目される。

 EU・米国間の交渉の争点は、@ 飛行機旅客個人情報の伝達方法、A 個人情報にアクセスしうる米国当局の制限、B 提供されるべき個人情報の種類・数にあったとされるが(参照@A)、@の点については、従来の "Pull-system" から "Push-system" に変更されることになった。つまり、これまでは、米国当局が航空会社のデータベースにアクセスし、情報を入手していたが、今後は、航空会社が送信することになる。

 送信された情報にアクセスしうる 米国政府機関の範囲は、米国によって決定される。その決定いかんによっては、United States Bureau of Customs and Border Protection(CBP)だけではなく、FBI も個人情報にアクセスしうることになるが、その場合には、旅客のプライバシーが適切に保護されなければならないとされている。

 新協定の締結を機に、米国側は伝達されるべき情報量の拡大を求めていたが、EU側が譲歩しなかったため、従来通り、34項目に限定されることになった。なお、これまで実務では、34項目の情報がすべて提供されていたわけではなく、また、すでに Push-system が採用されていたともされている(参照)。なお、提供された情報の保存期間はまだ 正式に決定されていない(参照)。

 今回の合意は、2007年7月末までの暫定的な性質を有するにすぎないが、EU内では、旅客の個人情報は米国に提供するだけではなく、EU内でも効果的に活用すべきとする見解も有力に主張されるようになっている(参照)。



参照: Der Standard v. 6. Okotber 2006 (EU und USA über Passagierdaten einig)
 

FAZ v. 6. Okotber 2006 (CIA bekommt Zugriff auf europäische Passagierdaten)

Die Presse v. 6. Oktober 2006 (Passagierdaten: AUA: "Übermitteln keine sensiblen Daten")

Die Presse v. 6. Oktober 2006 (Europäer übermitteln 34 Datensätze: Welche Daten übermittelt werden)

 


EC裁判所の判決

EC・米国間の協定

合意の締結遅れる



(2006年10月7日 記)