2010年6月17日(木)、欧州理事会がブリュッセルで開催された。ギリシャ危機 やEU内の財政・金融不安が深刻化する中、経済問題が主要な案件となった。なお、メディアの中には、スペインに対する財政支援も議題にのぼる報じているものもあったが
、同国からの支援要請は無く、協議されなかった。他方、ギリシャ支援については、すでに5月のEU理事会で合意が成立しており、同国に関する声明は今回の最終決議に盛り込まれていない。
主な決定事項は以下の通りである。
1. “Europe 2020” の採択
2000年3月、欧州理事会は「リスボン戦略」を採択し、雇用と持続可能な経済成長を達成するための戦略を設けているが、同戦略が失効するのを受け、新たに “Europe 2020” が採択された。
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2. 経済ガバナンス(economic governance)の強化
欧州理事会は、EU史上、最大とされる危機を克服するため、経済ガバナンス(economic
governance)を強化することを決定した。つまり、@加盟国は経済・財政政策をより緊密に調整し(EUの機能に関する条約第121条参照)、共通の目標を設けること、また、A成長・安定化協定の実施を強化し、加盟国財政への監視を強めるだけではなく、同協定違反に対する制裁を厳しくすることとした。さらに、ギリシャ危機を踏まえ、統計データの質を確保する必要性が確認された。
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3. 金融市場の規制
欧州理事会は、ヨーロッパ金融システムは早急に健全化・安定化されなければならないこと、また、金融機関の透明性を確保するため、遅くとも7月後半までに、監視機関が実施したストレステストの結果を公表することを決定した。
さらに、金融市場の監視を強化するため、European Systemic Risk Board と三つの European
Supervisory Authorities
を設置するが、それらが2011年初めより活動できるよう、EU理事会と欧州議会は迅速に法律を制定する必要があるとした。
欧州委員会はデリバティブ市場
、特に、空売りやクレジット・デフォルト・スワップ(cds)について検討し、適切な措置を提案する意向をすでに表明しているが、欧州理事会はこれを支持している。なお、理事会開催に先立ち、独仏首脳は空売り規制に関する提案を当初の予定より早めに提出するよう欧州委員会に求めていたが、委員会の計画に変更はないと解される。ところで、ドイツは完全に禁止すべきと考えているのに対し、フランスはドイツのように徹底していないと解される。欧州委員会も完全禁止には賛成していない。
加盟国は銀行税を導入することも決定された(ただし、チェコは保留)。また、国際競争条件を等しくするため(つまり、同税を課されるEU金融機関が不利な状況に置かれることを避けるため)、EUは同税の導入について、国際的アプローチの確立に努力し、また、G20でも、導入を提唱する。
さらに、金融の安定化には国際協調が求められるため、2010年6月のG20において、参加国は調整のとれた出口戦略について合意すべきであるとするEUの立場が決定された。
4.
その他
すでに欧州委員会は、アイスランドとのEU加盟交渉を開始すべきことを提唱しているが、欧州理事会によって支持された。
また、2011年元旦、エストニアが新たなユーロ導入国となることが支持された。
その他、イランに関する宣言が採択されている。
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