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EUの旗

2005年12月 欧州理事会の最終決議

EUの次期財政計画



 2005年12月、欧州理事会 (EU加盟国首脳会議)は、EUの次期財政計画 を決定した。同年6月の会議では、予算の配当や イギリス優遇策 の見直しについて協議が紛糾し、EUは「深刻な危機」に陥ることになったが(参照)、今回は、議長国イギリスの譲歩や、11月にドイツ首相就任し、初めて欧州理事会に参加することになった Angela Merkel の提案(英仏の仲介)が功を奏し、事態は収拾することになった(参照)。その主な内容は以下の通りである。


リストマーク 予算規模

 まず、2007〜13年のEU予算規模の総額は、8624億ユーロに限定された。これは、EUのGNI(国民総所得)の1.045%に相当する。当初、欧州委員会は、EUの拡大や諸政策の拡充に対処するには、より多くの予算が不可欠であるとし、1.14%への引き上げを提案していたが(参照)、支持されなかった。なお、現行制度上、1.24%まで増やすことが可能である(参照)。



リストマーク イギリス優遇策

 ほぼすべての加盟国より要請されていた イギリス優遇策 の見直しについて、議長国イギリスは、優遇策の削減に応じる一方で、新規加盟国に不利な財政計画を提案していたが、ドイツの妥協 に協調し、最終的には、払戻金を105億ユーロ削減することに合意した。 なお、2005年6月の欧州理事会では、180億ユーロの減少が提案されていた(参照)。

 削減された払戻金は、新規加盟国 の発展を支援するために 充てられる。その費用を捻出するため、イギリスの優遇策は、2014年以降も継続して削減される。


     リストマーク Blair首相の弁明 



リストマーク 予算の配当

 従来より、EU予算の大半は、農業政策(農業補助金)にあてがわれているが(参照)、2005年6月の欧州理事会において、イギリス政府は、その見直しを要請すると同時に、自国の優遇策 の削減は、予算編成方針の「現代化」を前提とすると主張していた(参照)。欧州委員会の見解もこれに合致しており、農業政策よりも、EUの恒常的発展に貢献しうる諸政策(研究・開発政策を含む)により多くの予算を割り当てる計画案を提出している(参照)。12月の欧州理事会の決定もこれに概ね合致しているが、研究・開発政策の予算は、委員会の提案よりも大幅に削減されている。



リストマーク 2007〜2013年の財政計画 リストマーク

 競争力の向上
 (研究・開発政策を含む)

 720.1 

 地域政策(地域振興)

 3081.2 

 農業政策

 2931.1 

 農村開発

  692.5 

 行政費用

503.0 

 外交政策

1478.8 

 その他

内政・司法協、文化政策など)

195.6 


(単位:億ユーロ)


(参照)

欧州委員会の提案

Die Presse v. 19. Dezember 2005 ("EU-Finanzrahmen 2007 bis 2013")




リストマーク 財政計画の見直し

 2008ないし2009年、欧州理事会 (EU加盟国首脳会議) は、財政計画の見直しについて検討することができる。この可能性は、制度の「現代化」を要請するイギリスと、農業補助金の削減を断固として拒み、むしろ、イギリス優遇策 の撤廃を主張するフランスの妥協を見出すために導入された。 なお、財政計画の決定同様、その見直しには全加盟国の同意が必要である。



区切り線

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リストマーク 欧州議会や欧州委員会の反応

 上述した 欧州理事会 (EU加盟国首脳会議) の決定は、欧州議会によって批判されている。これは、@ 予算規模が欧州議会の提案より約1120億ユーロ少なく(議会は、GNIの1.18%を要求していた)、また、A 研究開発予算費の大幅な増額が実現されていないことによる。また、同様の観点から、欧州委員会の Barroso 委員長 も、加盟国首脳の決定を批判している。Aの点について、議長国イギリスの Blair 首相は、確かに、欧州委員会の提案よりは少ないが、従来よりも多くの予算が割り当てられていると反論している(参照)。




〔参照〕

Die FAZ v. 20. Dezember 2005 ("EU-Parlament will Haushalts-Kompromiß nicht hinnehmen")

Die Presse v. 23. September 2005 ("Kommission steigert Druck auf London")

Die Presse v. 24. September 2005 ("Verspätete EU-Finanzeinigung wird teuer")

Vertretung der Europäischen Kommission in Deutschland, EU-NACHRICHTEN, 2005, Nr. 46, Seite 1 ("Eine gute Einigung")


加盟国の財政負担

EU次期予算計画決定の背景 

EU次期財政計画とドイツ

イギリス優遇策の削減、Blair首相の弁明


2005年12月の欧州理事会




イギリスの国旗  議長国の公式サイト



(2005年12月17日 12月26日 更新)