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オーストリア

2006年上半期 EU理事会議長国

オーストリア

ワルツ 2006年は、モーツァルトの生誕250周年にあたる。巨匠の祖国オーストリアでは、「モーツァルト年」として、多くの催し物が企画されているが、同年元旦、オーストリアは、イギリスよりEU理事会議長国のたすきを引き継いだ。前任国イギリスではEU懐疑論が根強いだけに(参照)、オーストリアに対する期待も大きいが、近時は、むしろ「アルプス共和国」の方がEUに批判的である。Eurobarometer の調査(2005年秋)によると、オーストリア国民のEU支持率は32%と、25ヶ国中、最も低い。この点について、オーストリアの Wolfgang Schüssel 首相は、 自国に不利な結論が示されたEC裁判所の近時の判例を指摘しながら、EUが「裏口」から国内法に手を加えることは受け入れがたいと述べている(参照)。

 サービス市場の自由化トルコのEU加盟 だけではなく、重いEU財政負担もオーストリア国民の懐疑論をあおっていると解されるが、2005年12月の欧州理事会 では、引き続き、純資金拠出国(EUより還元されるよりも多くの資金を拠出する加盟国)となることが決定された。この点について、Schüssel 首相は、2007〜2013年、オーストリアは、従来より多くの資金を支払わなければならないが(2000〜2006年の負担は70億ユーロ)、国民一人当たりの負担は、一月にわずか1.5ユーロであると説明している(参照)。また、オーストリアはEU加盟国の中でも最も裕福な国に属するため、当然の結果であるとしている。


 賃金水準の低い東欧諸国に隣接することもあり、Schüssel 首相は、サービス市場の自由化 には慎重で、ソーシャル・ダンピングを防止する明確なルールが必要であるとしているが(参照)、欧州統合を積極的に推進することには変わりがない。国民の見解に耳を傾け、支持率の拡大に努めることがウィーン政府の最大の課題となるが、理事会議長国期間の終了後(2006年秋)には、連邦議会(Bundesrat)選挙が予定されている。議長国としての手腕は、選挙結果にも影響を与えると解されるが、特に、EU拡大については、慎重にならざるをえないであろう。地理的にも、歴史的にも関係が深いバルカン半島諸国のEU加盟をオーストリア政府は推進している一方で(参照)、国民の過半数が反対しているとされるトルコとの加盟交渉(参照)は、オーストリアの議長国期間中に本格的に開始される。また、ブルガリアやルーマニアの加盟時期(参照)についても、議長国期間中に決定される予定である。オーストリアのイニシアチブが功を奏し、大きな発展が見られるとすれば、国民の支持率を失いかねない。野党、特に、極右政党として知られる BZÖJörg Haider 党首)は、オーストリアの独立性を訴え、反EUキャンペーンを展開する構えを見せている。 なお、ウィーン政府は、Haider 氏が州首相を務める Kärnten を第1回目のEU会合の開催地に指定するといったユーモアも示している(参照)。




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右より、Schüssel 首相
Ferrero-Waldner 欧州委員(前外相)
Plassnik 外相


写真提供
Audiovisual Library European Commission



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(参照) Die Presse v. 2. Januar  2006 ("Schüssel-Interview:
"Nationale Politik nicht untergraben"
)

Die Presse v. 2. Januar  2006 (Schwerer Start in die Präsidentschaft)

Die FAZ v. 1. Januar 2006, Seite 6 (Wolfgang Amadeus Schüssel)
 


EUの将来

オーストリア:理事会議長国期間中の主要計画


オーストリア:EU加盟から10年、低い満足度


トルコのEU加盟とオーストリア



オーストリア国旗 オーストリア理事会議長国の公式サイト


(2006年1月2日 記