Bush 大統領の旧ソ連構成国訪問
◎ ラトビアの訪問
ヨーロッパにおける第2次世界大戦は、公式には、1945年5月8日に終了したとされているが※、60周年目に当たる今年は、ロシアで記念式典が開催される予定である。
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我が国では、一般に、「対ドイツ戦争」の終了と報じられているが、当事国のドイツやオーストリアでは、単に「戦争」ないし「(ヨーロッパにおける)第2次世界大戦」として扱われている。 |
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5月9日の式典には、56ヶ国の首脳が出席する予定であるが(FR v. 7. Mai 2005, S. 7)、2700万人にも及ぶ旧ソビエト人戦没者に敬意を払い、Bush
大統領も臨席を計画している。米国大統領は、式典に先立ち、5月7日にはラトビアを訪問し、戦没者記念碑に献花したことで注目を集めている。
1940年、ラトビアを含むバルト3国は、国際法に反する形で旧ソ連に編入されることになったが、ロシアは、赤軍がナチス・ドイツの脅威から3国を解放したと捉えている。他方、ラトビアの
Vike-Freiberga 大統領は、かねてより、これを公けに批判し、スターリンによる支配を強く非難している(参照)。このような状況下、Bush 大統領のラトビア訪問は、バルト3国に連帯感を示すと共に、ロシアに対し批判的なメッセージを送ることになった。5月のヨーロッパ訪問に先立ち、Bush
大統領は、旧それによる3国の占領と合併だけではなく、終戦後の東欧支配を批判している(FR v. 7. Mai 2005, S. 7)。
その後、Vike-Freiberga 大統領は、Bush 大統領と共に、モスクワでの記念式典に出席する予定であるが、エストニアの Rüütel
大統領とリトアニアの Adamkus 大統領は、旧ソ連の支配に抗議し、参加を拒否している。
Vaira Vike-Freiberga 大統領(写真右)は、ラトビアが旧ソ連に編入される前に両親と共にカナダに移住し、その後、33年間にわたり、カナダで生活している。北米滞在中は、モントリオール大学で心理学の講義を担当している。なお、ヨーロッパで最もおしゃれな女性首脳としても知られている。
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(参照) |
Die Presse v. 7. Mail 2005 ("Baltischer Sieg im Propagandakrieg")
新旧加盟国間の軋轢について
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◎ グルジアの訪問
モスクワでの記念式典終了後、Bush 大統領は、グルジア訪問を予定しているが、これには、今なお、ロシアの支配を受けているグルジアを支援する意義がこめられている。グルジアはロシアに、軍隊の撤退を要請している。
ロシアと政治的問題を抱える旧ソ連構成国(ラトビアとグルジア)の訪問にロシアは苛立ちを覚えているとされるが(FR v. 7. Mai 2005,
S. 7)、Bush 大統領は、ロシアの立場に敬意を払いつつ、民主主義と自由の確立を訴えるものとみられている。
Bush 大統領のオランダ訪問
Bush 大統領は、5月6日にラトビアの首都リガを訪れた後、8日にはオランダに渡り、終戦記念式典に参列する予定である。会場となるマーストリア郊外の墓地には、オランダ人戦没者の他に、同国の解放のために戦い命を落とした8002名の米軍兵が埋葬されている。なお、Bush
大統領の式典参列には、イラク戦争の際に自国を支持したオランダへの謝意を表す意義が込められている。