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ECのWTO諸協定違反より生じた損害の賠償責任


バナナ紛争

アメリカ合衆国の対抗措置

 1999年4月19日、DSBによって報復措置の発動が正式に認可されたことを受け、米国は直ちにECからの特定の輸入品にかかる関税を大幅に引き上げている。税率は、許容された上限を最大限に利用し、100%(従価税)となった。例えば、イタリア製バッテリー(塩酸蓄電池)の関税率は3.5%から100%へ、また、フランス製バスソルト(入浴剤)の関税率は4.9%から100%に引き上げられた。これによって、EC産の製品は競争力を完全に、または、著しく失ない、倒産の危機に晒される企業もあったとされる(Held, op. cit., pp. 135-136)。なお、報復の対象には、バナナ以外の物品が選択された(cross retaliation〔紛争解決了解第22条第3項第b号参照〕)。また、措置の迂回を最小限にするため、対象製品の変更が計画されたが(carousel retaliation)、実際に変更されることはなかった。

 制裁の対象リストは、まず、1998年12月8日、United States Trade Representative  によって発表されているが、最終的には、1999年4月9日に確定されている。報復関税の徴収は、同年3月3日に遡って実施されたため、EC企業は十分な対策を講じることができず、大きな損害を被っ ている。中には、倒産が避けられなかった業者もあるとされる。

 2001年4月13日、ECはアメリカ合衆国と、また、同月30日にはエクアドルと紛争解決について合意した(参照)。これを受け、対抗措置はすでに中止ないし発動が見送られているが、2003年までに、米国による制裁額は6000億米国ドルに達したとされている。

 


 

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