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EU(EC)の通商政策

E C 法 体 系 に お け る 通 商 政 策 の 意 義

 EC条約第3条第1項は、ECの政策・活動を列挙しているが、加盟国間における関税の徴収や数量制限の禁止に続き(第a号)、通商政策が冒頭で掲げられている(第b号)。通商政策に関する主要な規定は、3部第9[1](第131条〜第134条)内に納められているが、その他の規定も援用されることが多い[2]


 EC条約(当初はEEC条約)が発効する以前、通商政策は各加盟国によって定められていたため、各国の政策には差異が見られたが[3]、現在では、ECレベルで統一的に定められ[4]、また、統一的に実施されている。そのため、ECの通商政策は、一般に「共通通商政策」と呼ばれる[5] なお、以下では、簡略に「通商政策」とする。


 通商政策は、ECの国際経済力を強化するためだけではなく、種々の観点から必要になる。例えば、EC関税同盟EC条約第23条以下参照)を基礎にしていることが挙げられる(詳しくは こちら)。すなわち、関税同盟に加盟する国の間では、第三国との貿易に関する諸規則や関税が統一されていなければならない[6]また、EC域内市場 の設立を指摘しえよう。すなわち、EC域内市場において保障される商品の移動の自由は、ある加盟国が第三国から適法に輸入した製品にも適用されるが、これは各加盟国の通商政策(輸入規則)が統一されていなければ、実現しえない[7]。例えば、ある果実につき、ドイツはフランスよりもより厳格な輸入審査基準を設けているとする場合、第三国産の果実はフランスに輸出することはできても、ドイツには輸出しえない。このような場合、フランス国内に搬入された果実をドイツ国内に自由に持ち込むことはできなくなるが、これではEC内における商品の自由な移動が達成されない。このような状況を解消するために、加盟国の通商規則を統一する必要がある。

さらに、ECからの輸出に関し、EC加盟国間の競争条件を均一にするためには、共通の通商政策(輸出規則)が必要になるといえよう[8]


 

[1]     アムステルダム条約発効以前は、第3部第7編で規定されていた。

[2]    マーストリヒト条約に基づき、第111条と第116条は削除されている。通商政策に関する規定として、その他に、EC条約前文および第3条を参照されたい。また、同政策の根拠条文として、第135条、第182条〜第188条、第60条、第300条、第301条、第308条および310が援用されることがある。

[3]    EC条約第307条参照。

[4]   EC条約第133条参照(同規定は、「共通通商政策は、 … 統一原則に基づく」と定める)。国内法の調整に関し、EC条約第94条および第95条参照。

[5]   See T. Müller-Ibold, Die Gemeinsame Handelspolitik, Vormerkung zu Art. 110-115, in: Lenz (ed.), Kommentar zum EG-Vertrag, Bundesanzeiger 1994, para. 2. なお、EC条約内における「共通」政策の概念につき、拙稿「ECの共通通商政策の分野における権限とEC裁判所における「意見」(Adivisory Opinion)手続」法学研究6812605頁以下(625頁注3)を参照されたい。

[6]    関税同盟につき、GATT 第24条第5項参照。

[7]    See Müller-Ibold, op. cit., Art. 110-115, para. 1.

[8]    加盟国による(国内企業への)輸出助成に関し、EC条約第132条を参照されたい。

 




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