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New Trade Policy
 リスボン条約体制下の共通通商政策


  

        船

 1.  目標・原則

 2.  EUの権限 

 3.  措置

 4.  意思決定手続

   ・条約の締結 

 ※  従来の共通通商政策





 序

 EC条約は、域内政策と域外政策(対外政策)を区分せずに定めていたが、リスボン条約は両政策を明瞭に分けている。つまり、域内政策はEUの機能に関する条約の第3部(第26条〜第197条)において、また、域外政策は同条約の第5部(第205条〜第222条)において規定されている。共通通商政策は、域外政策の一つとして、第5部第2編(第206条〜第207条)で定められている。なお、域外政策に関する一般規定は、EUの機能に関する条約ではなく、EU条約(第5編第1章第21条〜第22条)に置かれているが、共通通商政策にも適用される。
 
 これまで、共通通商政策は、EC(EUではない)にとって、ほぼ唯一の実効的な域外政策として捉えられてきたが(参照) 、リスボン条約によってECは廃止され、EUが引き継ぐことになった(参照)。新体制下において、共通通商政策は、共通外交・安全保障政策ともに、EUの主要な域外政策となる。

 共通通商政策に関し、リスボン条約は欧州憲法条約の規定を単に文言上の修正を加えた上で引き継いでいる。それらはEC条約第131条および第133条に相当するが、EUの権限を拡大 し、また、欧州議会の役割を強化 している点で異なる。他方、第132条(輸出補助の統一)や第134条(保護規定)は削除された。


1.目標・原則

 共通通商政策は、従来通り、@国際貿易の調和のとれた発展、A国際貿易障壁の段階的な撤廃およびB関税の引下げに貢献することを目標とするが(参照)、通商政策の今日的課題を踏まえ、リスボン条約は、C非関税障壁の撤廃や、D外国への直接投資にかかる制限の削減を目標に加えている(EUの機能に関する条約第206条)。 

 また、従来と同じように、共通通商政策はEU内で統一された諸原則に基づき実施される(第207条第1項第1文)。政策名に「共通」が付けられているのは、そのためである(参照)。

 なお、前述したように、リスボン条約は域内政策と域外政策(対外政策)を区分し、それぞれをまとめて規定しているが、共通通商政策は域外政策の一つとして、その原則および目標に照らし実施される(EUの機能に関する条約第207条第1項第2文)。


2. EUの権限

 2.1. 範囲

 共通通商政策の分野において、EUには広範な権限が与えられているが、前述したように、外国への直接投資に関する制限の削減が新たな目標として追加されたことを受け(第206条)、第207条第1項は、この案件に関するEUの権限についても触れている。

 従来より、EC(現在はEU)には通商協定を締結する権限も与えられているが、第207条第1項は、商品やサービスの貿易、また、知的財産権の貿易にかかる側面について条約を締結する権限を新たに挙げている(なお、EC条約第133条第1項は、このような条約の締結権について定めていなかったが、第5項〜第7項より、ECの権限が認められていた)。ただし、EUの権限は条約の締結に限定され、条約締結を根拠にEUが新たな権限を取得することにはならない。つまり、条約の締結に基づき、EUが域内政策に関する新しい権限を得たり、加盟国法の調整が明瞭に禁止されている分野では、EUのこの権限が派生的に生じることはない(EUの機能に関する条約第207条第6項、EC条約第133条第6項参照)。
 
 なお、運輸に関する国際協定の締結は、共通通商政策ではなく、運輸政策の対象となる(第207条第6項、EC条約第133条第6項第3款参照)。


2.2. 性質(排他性)

 共通通商政策は「統一された原則」に基づくというEEC条約第113条(EC条約第133条)第1項の文言に鑑み、EC裁判所は、ECの権限を排他的とみなしてきた 。つまり、通商政策に関し、加盟国はECに権限を完全に委譲しており、ECのみが権限を持つ(詳しくは こちら)。リスボン条約体制下においても、この原則は適用されるが、EUの権限の排他性は、EUの機能に関する条約第3条第1項第e号で明確にされている。

 なお、サービスや知的財産権にかかる通商条約の締結に関し、従来のEC条約第133条第5項および第6項第2款(ニース条約体制)はECの権限の排他性を明瞭に否定していたが、リスボン条約はEUの権限を排他的とする。これによって、EUはWTO諸協定の適用範囲において、すべての権限を単独で有し、従来のように、加盟国と共に行動する必要はなくなる 。


3.措置(第2次法)

 EUの機能に関する条約第207条第2項は、共通通商政策の枠組みを定める第2次法として、規則(regulations)のみを挙げている。「枠組みを定める第2次法」とは、ダンピング防止政策 の分野における「基本規則」のように、ある特定の政策・案件の大綱について定める法令を指すが、前述したように、これは「規則」という形態をとる(従来は特定されていなかった)。なお、この第2次法の実施にかかる法令は「規則」に限定されない。つまり、通常、「規則」は対象を限定せず、広く一般的に適用されるが(参照)、この「規則」を実施するため、欧州委員会は特定人を対象にした措置(決定)を講じることもできる(第290条第1項参照)。


 


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