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リストマーク はじめに

 経済的に発展し、また、政治的に安定したEUには、多数の移民や亡命者が押し寄せているが、入り込むのは人だけではなく、犯罪もまた同様である。そのため、EU加盟国の移民・庇護政策を調整し、また、共同で国際犯罪に取り組む必要が生じる。いわゆる「EUの第3の柱」 (リストマーク 参照) は、これらの案件を対象にしているが、「刑事に関する警察・司法協力」は、マーストリヒト条約 によって導入され、アムステルダム条約 によって改組された比較的新しい政策分野である。また、国際テロが多発する中で、近時、その重要性が特に増しているが、基本的な権限は加盟国の下に残っている。EUと加盟国の権限配分に留意しながら、「安全、自由および正義の空間」(EU条約第2条第1項第4号、第29条参照)を創設するため、EU(加盟国)は時事的な問題にどのように対処しているかを検討する必要がある。
犯罪対策    


リストマーク 法的基礎
 
 警察・司法分野におけるEU加盟国間の協力制度は、マーストリヒト条約(1992年2月制定、1993年11月発効)に基づき導入された(EU条約旧第K条参照)。当時の正式名称は、「司法・内政分野における協力」であり、国際条約(つまり、マーストリヒト条約)に基づく緩やかな政策協力としてスタートした( リストマーク 参照)。その主な対象は、移民・庇護政策、また、国境検査、麻薬取引やその他の重大国際犯罪対策の調整であった。

 しかし、より自由で、安全と正義が保障された空間(EU条約第29条参照)を創設するためには、従来の政府間協力では不十分であることが明らかになった。また、対象事項である移民・庇護政策や国境検査は、移民や亡命を求める者の人権に関わるだけではなく、ECの管轄事項である人の移動の自由にも密接に関連する 。そのため、政策の透明性や正当性を高めるだけではなく、欧州議会の関与を強化したり、EC裁判所による司法統制 を導入する必要性が強く指摘されるようになった。このようなことを 受け、1997年10月に制定されたアムステルダム条約(1999年5月発効)は、主要な案件を超国家機関であるECの管轄に移した (EU条約第29条〜第42条 リストマーク 参照)。その結果、いわゆる「EUの第3の柱」は、刑事に関する警察・司法協力のみを対象にすることになったが、それに伴い、政策の名称も「刑事に関する警察・司法協力」に変更され、現在にいたっている。この分野においては、従来どおり、加盟国に基本的な権限が残されており、EUレベルでは、緩やかな政策協力が行われるに過ぎないが、欧州委員会には特別な権限(提案権 や保佐権)が与えられている。


リストマーク 「第3の柱」から「第1の柱」に移された案件 リストマーク

いわゆる「EC法化」


 加盟国間の協力制度である「第3の柱」より、超国家機関ECの「第1の柱」に移された案件(
「EC法化」された事項)は以下の通りである。

 ・ 国境検査・ビザ政策(EC条約第62条)
 ・ 庇護政策(第63条第1号、第2号)
 ・ 移民政策(第63条第3号)
 ・ 民事に関する司法協力(第64条)



 なお、EU理事会は、欧州委員会または加盟国の提案を受け、ある案件は「第3の柱」の対象事項か、または、EC条約の対象事項かを全会一致で決定し、同時にその立法手続を定めることができる。理事会は、この決定を国内憲法の定めに従い採択するよう加盟国に勧告するものとする。理事会の議決は全会一致によるが、その前に、欧州議会の意見を聴取しなければならない(EU条約第42条)。


 
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