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リスボン条約
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アイルランド国民投票


Eurobarometer のアンケート調査結果にみる批准否決の理由


アイルランド国旗 2008年6月12日のアイルランド国民投票で、リスボン条約の批准が否決されたことを受け、Eurobarometer は、翌13日から15日の期間中、2000人(18歳以上)のアイルランド国民に電話アンケートを実施した。この調査は、@ 賛成票ないし反対票を投じた理由、A 投票しなかった理由、また、B 国民投票に関するキャンペーンや結果に関する意見を調べるため、欧州委員会の委託を受け実施されたものである。6月20日に公表された 主な調査結果 は以下の通りである。


 まず、最も注目すべき批准反対理由であるが、選択式ではなく、自由に意見を述べる方式でとられた今回のアンケート調査で、一番多かった回答は、リスボン条約に関する知識不足であり(22%)、その他の理由を大きく引き離している。同時に投票しなかった者の最大の理由も、条約の内容を理解していないことであった(52%)。

 次に多かった反対理由は、自国のアイデンティーの維持であるが(12%)、政治一般に対する不信、外交・安全保障政策上の中立性の維持、今後も自国より欧州委員会のメンバーが選ばれるべきであること、自国の租税制度の維持(それぞれ6%)、また、“unified Europe”に反対していること(5%)も挙げられている。さらに、グローバルな問題についてEUが加盟国に代わって行動することや大規模な加盟国の比重が大きいことに対する反感(それぞれ4%)、また、小国の利益を守るため(3%)という意見も見られたが、いずれも割合としては小さい。さらに、妊娠中絶や同性間婚姻の導入や移民問題は、それぞれ1%に留まっており、扇動的な反対運動の影響力は決して大きくないと言えよう

 このように、反対理由は多岐にわたっているが、それらは、@リスボン条約の内容を理解していないこと、A 自国の主権・利益擁護、また、B その他の理由(現政権に対する批判)に分けることができる。その内、@の割合が非常に高くなっているが、これは、膨大かつ複雑な国際条約の是非を、(法律家ではない)一般国民に問うという国民投票の構造的欠陥を浮き彫りにしている。また、判断の対象を理解していない者が一票を投じる危険性も見過ごしてはならない。なお、批准反対者であれ、欧州統合そのものに反対しているわけではない。実に80%の批准反対者が、自国のEU加盟には賛成している(当然のことながら、EU加盟支持率は、批准賛成者の間で高くなっている〔98%〕)。そのため、批准賛成運動を展開していたアイルランド政府や主要政党は、対策が充分であったか検討しなければならないが、リスボン条約の「宣伝」に精力的なのは、むしろ批准反対派であることは他の加盟国内でも同様である。実際に、投票者の大半(68%)は反対運動が最も説得力があったとみており、賛成運動を最も評価する者は15%に過ぎない。また、賛成票を投じた者の中においてでさえ、反対運動が最も説得力があったと考える者が半数を超えている(57%)。なお、反対票を投じた者の76%は、今後の条約交渉過程において、自国の立場は強化されるであろうと捉えているが、賛成票を投じた者の約3分の2は、全く別の見方をしている(つまり、EU内におけるアイルランドの立場は弱くなると考えている)。条約の再交渉は、前掲の批准反対理由として挙げられていないが、これも主要な反対理由の一つとして捉えるべきであろう。この点に関し、アイルランドには前例があるが(詳しくは こちら)、2008年6月の欧州理事会では、同国に対する特例は導入されなかった(詳しくは こちら)。


 批准反対者とは対照的に、賛成者は、自国の利益にかなう(32%)、また、EUの恩恵を大きく受けていること(19%)、自国の経済発展に貢献すること(9%)を主な賛成理由として挙げている。

 批准反対者の多くは、18〜39歳の若者や女性(特に、主婦)、また、失業者の中で多くなっているが、Eurobarometer は、18〜24歳の若者層の投票率は高くなく、投票所に足を運んだ者の中では批准反対派が多かったに過ぎないと捉えている。他方、高齢者や労働者、特に、管理職にある者の多くは批准に賛成していた。

  

(参照) Eurobarometer の公式サイト

 ・アンケート調査結果







アイルランド国旗 アイルランドの国民投票

 ・ Ahern 首相、国民投票の実施日を発表

 ・ 批准反対派の台頭

 ・ 国民投票の結果

 ・ 批准否決の背景

 ・ Eurobarometer の調査結果

 ・ 今後の対応

   ・ 2008年6月の欧州理事会決議


 ・ EU・加盟国要人の発言

 ・ アイルランドのための特別保障を採択

 ・ 2009年10月2日に国民投票を実施

New  第2回目の国民投票まで1ヶ月



EUの旗 他の加盟国によるリスボン条約の批准



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(2008年 6月 20日 記)