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リスボン条約
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ドイツ連邦憲法裁判決の要点

BVerfG, 2 BvE 2/08 vom 30.6.2009

ドイツ国旗 リスボン条約の批准に関するドイツ連邦憲法裁判所の判決は非常に膨大であり、多くの事項について判断されているが、主たる要点は以下の通りである。


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リスボン条約に基づき、加盟国はEUにさらに権限を委譲することになるが、それは違憲か。

 ドイツ基本法(憲法〕第23条は、ドイツの欧州統合過程への参加を認めており、基本法が定める条件に従う限り違憲ではない。基本法(憲法)に反すると判断されたのは、国会の権限拡充・強化に関する法律であるが、それはリスボン条約によってEUに新たに権限が委譲される政策には関係していない。


A

現段階において、新たに制定される国内法の大部分(80%程度と解されている)はEU・EC法に端を発しているが、EUへのさらなる権限委譲によって、国内議会の立法権限はさらに弱まり、憲法に違反するか。  

 国内議会の権限が形骸化するかどうかは、量的にではなく、質的に判断されなければならない。つまり、ドイツが重要かつ市民の生活に関わる分野において、実質的な決定権限が与えられているかによる(Rdnr. 351)。リスボン条約発効後も、この権限はドイツが保有し、連邦議会の憲法上の権限が損なわれるわけではない(Rdnrn. 273-274)。


B

リスボン条約は、EUをさらに民主化しているが、国内憲法上の民主主義の要請を満たすか。または、EUの政策・立法は民主的に正当化されるうるか。

 リスボン条約発効後も、EUは国内憲法上の民主主義原則に合致するわけではないが、EUは国際機関であり(リスボン条約発効後、EUには法人格が与えられる)、個別的授権の原則に従う限り、国内憲法の要請を満たしていなければならないわけではない(Rdnrn. 275 ff.)。また、欧州議会も、国内憲法上の原則(選挙の平等性)に合致していなければならないわけではない(Rdnrn. 278 und 284-287)。この民主的欠陥は、加盟国議会を通し正当化されなければならない(Rdnrn. 291 ff.)。連邦憲法裁判所が指摘する「加盟国議会を通した間接的民主的統制」の原則は、本判決の最も重要なキーワードになっているが、この原則、つまり、国内議会の権限強化は、リスボン条約の重要事項にもあたる(Rdnrn. 36-38)。

 EUの機能に関する条約第82条第3項および第83条第3項は、理事会の立法手続を停止させる権利を加盟国に与えているが(いわゆる緊急停止手続)、ドイツ基本法に照らすならば、理事会におけるドイツの代表は、この手続において、ドイツ議会の見解に拘束されなければならない。

 また、リスボン条約は、条約改正手続を経ない条約の実質的な改正を可能にしているが、その審議に際し、加盟国政府は国内議会の見解に従わなければならず、議会が見解を発しないときは同意するものと解してはならない(詳しくは こちら)。


C

リスボン条約第17宣言で謳われている「EU法の優先性」は国内憲法上、問題があるか。

 EU法が国内法に優先することは従来より広く認められてきており、絶対的な優先性を認めることもドイツ憲法に反するものではない。この点については、EUの司法機関によってEU法が統制されていることを考慮する必要がある。ただし、EU法はドイツ憲法上の重要原則(価値)に合致していなければならず、連邦憲法裁判所は、その点について審査しうる(Rdnrn. 331-343)。


D

リスボン条約に基づく管轄権の拡充(刑事・民事に関する司法協力、外交政策、共通防衛政策、社会政策)はドイツ憲法に違反するか。

 ドイツ基本法第23条はドイツが欧州統合に参加することを認めており、さらなる権限の委譲は違憲ではない。ただし、特に、刑事分野での司法協力については、市民の日常生活に与える影響や民主主義原則に立脚した加盟国の立法権限に密接に関わることを考慮し、以下の点に留意すべきである。


刑事分野での司法協力に関するEUの権限は狭く解釈されなければならず、その行使には特別の正当化事由を要する。

EUの機能に関する条約第83条第1項は、国境を越えた重大犯罪に関する指令を制定する権限を理事会と欧州議会に与えている。同項第3款は、「犯罪の発展に応じ」、その他の(重大な国際)犯罪をも含ませることができる旨を定めるが、これはEUの権限の拡大にあたるため、基本法第23条第1項第2文が定める国内法の制定を必要とする。

EUの機能に関する条約第82条第3項および第83条第3項は、理事会の立法手続を停止させる権利を加盟国に与えているが(いわゆる緊急停止手続)、ドイツ基本法に照らすならば、理事会におけるドイツの代表は、この手続において、ドイツ議会の見解に拘束されなければならない。

  

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(参照) ドイツ連邦憲法裁判所、リスボン条約批准の合憲性を確認

EUや他の加盟国に与える影響

 

ドイツ連邦憲法裁判所の判決(BVerfG, 2 BvE 2/08 vom 30.6.2009


 


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(2009年 7月 5日 記)