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アイスランド、EU加盟を正式に申請


アイスランド 2009年7月23日、アイスランドの Össur Skarphéðinsson 外相は、EU加盟申請に必要な書類を スウェーデン (現EU理事会議長国)の Carl Bildt 外相に提出した。アイスランドのEU加盟はかねてより検討されているが、EUの漁獲量制限 や、いわゆる 「EC海」における漁業の自由 が大きな障害となり、加盟は実現していない(参照)。これらの漁業問題は依然として存在するが、人口わずか31万3000人の海洋国がEU加盟申請を決断した背景には、国際経済・金融危機の影響を非常に強く受けていることがある。また、2006年、米国がアイスランドに設けていた軍事基地を事前に交渉することなく閉鎖したことも、ヨーロッパへの回帰を促している。

 Skarphéðinsson 外相は、3年以内のEU加盟を目標に掲げているが、すでに 欧州経済領域(EEA)シェンゲン協定制度 に加盟しているアイスランドは、EU法の75%を国内法に置き換えているとされる。EC法の総体系 でいえば、全35章の内の22章で審査が終了しているとされるため(参照)、短期間の内にEU加盟が実現する可能性は高い。また、トルコの加盟問題にみられる「感情的な」衝突も生じないと考えられる(参照)。もっとも、前述した漁業問題や農業政策は、欧州経済領域(EEA)で扱われておらず、加盟交渉は難航するものと考えられる。特に、経済・金融危機によって漁業の重要性が再認識されているため、アイスランドが自国の漁業水域内での操業をEU加盟国にも認めるか(参照)、また、EUの漁獲量制限を受け入れるか注目される。なお、同国の国民生活が漁業に大きく依存していることを考慮し、特例が設けられる可能性もある。その他の問題としては、経済・金融危機の状況下、アイスランドが銀行を国有化したことによってイギリスやオランダからの多くの預金者が貯金を没収され、両国との外交関係が悪化していることが懸念されている(参照)。

 今後は、EU条約第49条が定める手続にのっとり、アイスランドが加盟基準を満たしているかどうかが欧州委員会によって審査される。また、加盟交渉を実際に開始するかどうかはEU理事会によって決定されるが(詳しくは こちら)、EU加盟国とアイスランドとの経済統合は、従来の加盟申請国よりも進展しているため、大きな問題なく可決されるものと考えられる。

 加盟交渉が本格的に開始されるのは2010年上半期と解されるが、この期間は同じく漁業に大きな利害関係を持つスペインが議長国になるため、交渉が遅滞する可能性もある。他方、アイスランドの目標通りに進展するとすれば、クロアチアとの同時加盟も可能である。同国も2012年末までの加盟を目指しているが、すでにEUに加盟しているスロベニアとの国境紛争がこじれ、2008年末より、加盟交渉は中断している。なお、2009年には、スロベニアやクロアチアと共に旧ユーゴスラビア連邦の一員であったアルバニアもEU加盟を正式に申請しているが、EUとの結び付きが遅いアルバニアの加盟はさらに遅れるものと予測される。

 

 

(参照) スウェーデン議長国の公式サイト

FAZ v. 23. Juli 2009 (Antrag auf EU-Beitritt eingereicht)

Die Presse v. 23. Juli 2009 (EU: Islands Fischern stinkt der Beitritt)



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(2009年 723日 記)