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EUの環境政策
 


2008年1月の欧州委員会提案


 欧州理事会(2007年3月)の要請を受け、欧州委員会は、2008年1月、新しい環境保護政策案をまとめあげた。その中では、特に、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの排出権取引に関し、EU規模で市場を統一することが提案されている。この新しい市場は、すでに2005年元旦より導入されている制度を基礎にするが、従来の制度とは異なり、二酸化炭素に限定されず、EU内の全ての温室効果ガスの40%をカバーする。排出量取引量は毎年削減され、2020年までに21%減らすものとされている(2005年比)。また、取引量の上限はEUレベルで確定される。

 なお、この新しい市場に組み込まれるのは、全排出量の40%で、大部分の排出権証書は新しい市場で競売にかけられるものとされる。つまり、従来のように、無償で譲渡することは、原則として認められなくなる。競売の出来高は加盟国に還元され、二酸化炭素などの排出削減に関する研究に使われることが予定されている。その額は、2020年までに、年間500億ユーロに達するものと欧州委員会は見込んでいる。

 新しい市場制度の詳細は、業種ごとに異なっている。例えば、電力生産者は2013年より完全に新制度に組み込まれ、排出権証書の無償譲渡は認められなくなるが、その他の産業分野では、80%まで許される。鉄鋼業や航空業は、2020年までに新制度に移行することになっているが、詳細は2010年に決定される(陸上交通については、自動車排出ガスの削減を参照)。なお、二酸化炭素の排出量が1万トン以下の施設には新制度は適用されない。このような分野では、排出量は2020年までに、EU全体で10%削減するものとされ(2005年比)、各加盟国別に削減値が定められている。その算定には、各国の一人当たりの国内総生産が用いられており、それがEU平均を上回る加盟国の値は大きい(大きい順に、デンマーク、アイルランド、ルクセンブルクの各20%、スウェーデンの17%)。逆に、EU平均を下回る加盟国(キプロスを除く新規加盟11ヶ国とポルトガル)は、排出量の増加が許される。

 

 再利用可能なエネルギー源については こちら