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ブルガリア国旗 ブルガリアとルーマニアのEU加盟

欧州委員会、2007年の加盟に期待をつなぐ

ルーマニア国旗


 2006年5月16日、欧州委員会は、ブルガリアとルーマニアは、当初の予定通り、2007年元旦にEUに加盟しうるであろうとの見解を示した。もっとも、これは両国が制度改革をさらに進めることを条件としている。その進捗状況について、委員会は遅くとも2006年10月までに報告書をまとめ、それを基に、2007年の加盟が可能かどうか、また、保護規定や加盟支援措置について判断するとしている。

 2005年4月に加盟協定が締結された時点では(参照)、ブルガリアの取り組みの方が進展していたが、現在は状況が逆転している(参照)。5月16日、欧州議会に対して提出された報告書の中で、欧州委員会は、ブルガリアの集団犯罪対策や詐欺・汚職撲滅対策はごく限定的にしか発展していないだけではなく、資金清浄(マネー・ロンタリング)に関する取り締まりは、むしろ後退しているとし、緊急の対策を勧告している。他方、ルーマニアについては、詐欺・汚職の撲滅に向けた取り組みが評価される一方で、EUからの農業補助金の管理システムや農業行政組織を整備・構築する必要性が指摘されている(ブルガリアも同様に、この制度を整備・構築しなければならないとされる)。
 



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 欧州委員会の報告書の公表が近づくにつれ、委員会は加盟時期に関する判断を2006年秋まで延期するであろうという憶測が高まっていったが(参照)、5月16日、欧州議会に提出された報告書の中で、委員会は実際にこの方法を選択している。同時に、ブルガリアの制度改革が非常に遅れており、2007年元旦のEU加盟は非現実的であるとの見解も強まっていたが(参照)、加盟の先送りは、ブルガリアの国内情勢を不安定にするだけではなく、制度改革の歩みを緩めることにもつながりかねないため、明確な No の方が非現実的であるとの見方も強かった。5月16日の報告書において、欧州委員会は判断を先送りする一方で(これは、現時点では加盟要件がまだ満たされていないことを表している)、2007年の加盟に期待をつなげている点は評価しえよう。

 なお、2005年4月に締結された加盟協定(参照)では、ブルガリア(およびルーマニア)の加盟は2007年もしくは2008年と定められており、それ以降の選択肢は設けられていない(参照)。また、2008年への延期には、EU加盟25ヶ国の全会一致の同意を必要とする(ルーマニアについては、相対的多数決による決定で足りるが、これは加盟協定締結当時、同国の加盟準備が遅れていたためである)。つまり、1ヶ国でも反対する限り、加盟は2007年に実現する。そのため、国内制度改革の進捗状況いかんにかかわらず、第2次東方拡大は達成されると解される。なお、ブルガリアとルーマニアのEU加盟には、加盟協定が両国と全EU加盟国によって批准されることを必要とする。ドイツやフランスはまだ批准手続を完了していない (ドイツは、5月16日の欧州委員会報告の結果を踏まえ、批准について検討するとしていた)。両国が批准を見送るとすれば、東欧諸国の新規加盟も見送られるが、原加盟国が批准を拒む可能性は非常に小さい。




(参照)

欧州委員会の報告書(欧州委員会の公式サイト)


Die Presse v. 22. April 2006 (Erweiterung: Brüssel ziert sich vor neuen Beitritten) 




ルーマニアのBasescu 大統領、自国のEU加盟について語る


ルーマニアとブルガリアの同時加盟の可能性 


欧州委員会、ルーマニアとブルガリアの2007年元旦加盟を支持
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(2006年5月16日 記)


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