フランス と オランダ の国民投票で、欧州憲法条約 の批准が否決されたが(こちらを参照)、その背景には、急ピッチで進められるEU拡大に対する警戒感が横たわっている。とりわけ、フランスでは、労働力の安い東欧諸国からの移民の流入によって国内の失業率がますます悪化することや、ソーシャル・ダンピングによる生活水準の低下に対する懸念が強い(詳しくは
こちら)。他方、オランダでは、反イスラム主義(つまり、トルコのEU加盟に反対する立場)や、自国の独自性ないし独立性の喪失が主張されている(詳しくは こちら)。
このような情勢下、EU拡大は、しばらく休止すべきとする見解も聞かれる。なお、ブルガリア、ルーマニアとは、2005年4月25日に加盟協定が締結されたばかりである。同協定は、加盟申請国で制度改革が遅滞なく実施されるならば、2007年元旦にEU加盟が実現しうると定めているが、近時は制度改革に遅れが見られる。そのため、欧州委員会の
Rehn 委員(EU拡大担当)は、ブルガリアとルーマニアに「イエロー・カード」を示し、汚職撲滅対策や司法制度改革(裁判官の独立性の保障を含む)を速やかに実施するよう警告している。また、欧州憲法条約批准危機や近時のEU拡大見直し論を考慮すると、両国は加盟要件の遵守について、真剣に取り組まなければならないと述べている(参照)。
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