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ブルガリア、ルーマニアとの加盟協定の締結


2007年元旦の加盟、1年延期も可能

 2005年4月25日、EU加盟25ヶ国は、ブルガリアおよびルーマニアと 加盟協定 を締結した。これによって、2つのバルカン半島諸国が新たに「ヨーロッパ」に回帰する可能性が高まったが、加盟への道のりはまだまだ遠く、両国の取り組みが遅れる場合には、2007年元旦とされる加盟時期を1年先送りすることも可能とされている(ブルガリアについては、EU加盟国の全会一致で、他方、ルーマニアについては特定多数決で決定するものと考えられている)。なお、このように加盟時期延期の可能性について定められるのは今回が初めてであるが(参照)、これは新規加盟国に圧力をかけるだけではなく、EUは昨年5月に歴史的な拡大を達成したばかりであり(東方拡大)、性急な第2次東方拡大をけん制する意義も有している。なお、2007元旦年ないし1年後の加盟の先送りや、その他の代替案については規定されていない。

 2004年5月に加盟した10ヶ国(参照)だけではなく、ブルガリア、ルーマニアとの加盟交渉も同時に行われていたが、両国はEU加盟に必要な制度改革が遅れたため、同時加盟は見送られた(詳しくは こちら)。その後、2004年12月になって加盟交渉が正式に終了し、加盟時期は2007年元旦(ないし一年後)と定められた。しかし、それまでにすべての加盟要件を充足しうるかどうかは疑問視されている。特に、ルーマニアに関しては、汚職や 組織犯罪対策が不十分であることの他、少数派(ジプシー)の保護、司法制度、国境警備、競争政策(国家援助)、環境保護、ダンピング保護政策について、EUの規準に達していないとされる。他方、ブルガリアは、汚職や 組織犯罪対策の強化、また、刑法改正が課題とされている。



   リストマーク 両国の同時加盟の必要性




 2005年4月26日付けの Der Standard 紙 によると、ルーマニアの Ene Dinga 欧州統合担当大臣は、2007年元旦の加盟に代わる目標はないとし、加盟要件の充足に徹底して取り組むブカレスト政府の方針を示した。ルーマニアでは昨年、自由党政権が誕生しているが、かねてより批判されているにもかかわらず、汚職の取締りが緩慢であるのは、旧社会政党政権の政策に原因があるとしている。新政権は、汚職に対する刑罰を強化している。なお、Dinga 担当大臣は、ルーマニアには、「汚職や組織的人権侵害の文化」が根付いているのではなく、EUの厳しい調査の過程で個々のケースが明るみになっているに過ぎないとも述べている。

(参照) Der Standard v. 26. April 2005 ("Rumänien sagt Korruption den Kampf an")



 加盟協定の締結式典は、4月25日午後、現EU理事会議長国であるルクセンブルクにおいて、月例EU外相会議の終了後に挙行された。EU側からは加盟25ヶ国の外相が、また、ブルガリア、ルーマニア両国からは、それぞれの大統領と首相が出席し、調印に臨んだ。ホスト国であるルクセンブルクの Juncker 首相は、ブルガリアとルーマニアは、戦後のヨーロッパに普及している自由をまだ知らないが、今日、我々はこのような状態に終止符を打つことができたと述べている(参照)。

 なお、4月25日、加盟国の外相は、同じバルカン諸国であるセルビア・モンテネグロと協定を締結し、将来のEU加盟を支援することを決定している。また、翌26日には、加盟交渉の開始が延期されている クロアチア や、本年10月3日に加盟交渉の開始が予定されちている トルコ とも話し合いが持たれた(参照@A)。東方拡大 から1年も経過せず、十分に消化しきれていない段階で、ブルガリア、ルーマニア(両国は遅くとも2008年までにEUに加盟しうると解される)、クロアチアトルコ に次いで、新たにセルビア・モンテネグロも視野に入れるのは性急過ぎるとして批判する見解も少なくない(参照)。



(参照) FAZ v. 25. April 2005 ("Die EU nimmt Bulgarien und Rumänien auf")

Die Presse v. 14. April 2005 ("EU: Nächste Erweiterung rückt näher")

Der Standard v. 25. April 2005 ("Rau: Europas Fall")

Der Standard v. 26. April 2005 ("Zu schnelles EU-Tempo")

Der Standard v. 26. April 2005 ("Auch die Türkei ist in Luxemburg gelanden")


両国の同時加盟の必要性
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(2005年4月26日 記)



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