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EUの旗 トルコのEU加盟問題
加盟交渉手続
トルコの旗



トルコのテロ防止法改正

EUの批判、強まる



 トルコ南東部(クルド人居住地域)で発生した近時の暴動 (参照)に対処するため、トルコ政府はテロ防止法の改正作業を進めており、波紋を広げている。この法改正は、テロないし政治デモに対する罰則を強化するとともに、子供がデモに参加した場合、その親を処罰することや、軍隊批判や軍役廃止を訴える者の処罰を可能にしているが(参照)、これらは、少数民族クルド人の抑圧を主たる目的としていると解されるため、トルコの少数派保護政策のあり方が再び疑問視されるようになった。


 1984年、クルディスタン労働党(PKK)は、クルド人が多数住むトルコ南東部の独立を標榜し、武装闘争を開始した。EUはPKKをテロ組織と認定し、その活動を批判しているが、他方、トルコ政府に対しては、1200万のクルド人により多くの権利を与え、その言語や文化を奨励するよう要請している(参照)。


 2005年5・6月、フランスとオランダの国民投票で欧州憲法条約の批准が否決されて以来、トルコのEU加盟消極論が台頭しているが(参照)、前述した法改正は、この傾向を強めることになった。人権保護ないし少数派の保護は、EU加盟要件のひとつにあたるが(参照)、一連の制度改革が評価され、EU加盟国首脳は、2004年12月、トルコとの加盟交渉を開始すべきであると決定している(参照)。しかし、テロ防止法の改正は従来の改革路線に逆行し、加盟要件 にも反するとギリシャ、キプロスおよびフランスは強く抗議している。他方、イギリス、スペイン、フィンランドは、現段階で、この要件を考慮すべきではないと反論している(参照)。

 その他にも、キプロス問題 ないし関税同盟の実施 に関し、トルコはEUから厳しく批判されているが、2006年4月26日、アメリカの Rice 国務長官はトルコを訪問し、同国のEU路線 を後押しするとともに、キプロス問題の解決を支援する米国の方針を伝えた。2004年のマドリード・テロ以降、米・EU関係は飛躍的に改善されているが(参照)、世界平和、民主主義の普及、人権尊重を標榜する Bush 政権がトルコにどのような影響を与えるかが注目される。

 


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(参照)   Die Presse v. 21. April 2006 ("Ankara verschärft Anti-Terror-Gesetz")

Die Presse v. 21. April 2006 ("Türkei: "Systematischer Folter")

Die Presse v. 25. April 2006 ("Rice: Türkei muss EU-Kurs fortsetzen")

FAZ v. 31. März 2006 ("EU besorgt über Gewalt in Kurdengebieten")

 





(2006年4月27日 記)




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