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トルコの国旗   トルコのEU加盟問題
トルコのEU加盟問題     EUの旗


 リストマーク Pro (賛成派)

 ◎ ドイツ(ベルリン) Heinrich Münkler (政治学者)

 トルコのEU加盟は、イスラム社会に対するEUの影響力を増し、また、紛争地域の長期的安定化に貢献しうる。

 トルコのEU加盟によって、EU内の「同士感」(Wir-Gefühl) が薄れるという批判があるが、これは、すでに1981年の南方拡大参照以降、失われている。EUは、もはや「仲間意識」を要請してはならない。現に、ユーロシェンゲン協定など、全加盟国が同一の政策を実施しているわけではない。

 また、EU加盟国とトルコは、文化的に異なるとされることがあるが、ギリシャにも、西欧の文化とは異なる村落がある。

 約40年前に、トルコがEU加盟を申請していなければ、特権的パートナーという考えも説得力を有したであろうが、今日では、非現実的であり、EU加盟の拒絶は、トルコを落胆させるだけではなく、致命的な結果を招く。つまり、前述した地理的要因だけではなく、不利益な結果を避けるという意味でも、トルコのEU加盟を否認すべきではない。


  (参照) ZDF



 リストマーク Contra (反対派)

 ◎ ドイツ(ベルリン) フンボルト大学 Heinrich August Winkler 教授

 トルコのEU加盟は、EUだけではなく、トルコにも重い負担となる。政治文化、経済的状況、また、国内の分裂を考慮すると、トルコは、15年以内にEUに加盟しうる状態にない。

 トルコでは、依然として拷問が行われており、また、女性の差別や名誉の殺人といった問題も残っている。これらの点を考慮すると、共通の政治文化が形成され、また、「同士感」(Wir-Gefühlが醸成されていくとは考えがたい。

 トルコ国民一人当たりの平均収入は、従来のEU市民の平均の23%に過ぎない。さらに、東部(アジアに位置するトルコ領土)では、9%である。これまで、最も収入の少ない加盟国はラトビアであったが、それでも33%に達していた。在ミュンヘンの東欧研究所の調査によれば、トルコのEU加盟には、140億ユーロに上る資金が必要とされるが参照、それはどのようにして調達すればよいのであろうか。

 トルコのEU加盟によって、中近東におけるEUの影響力が増すという見解もあるが参照、これは、EU加盟国が外交政策を統一しうる場合に当てはまることであって、独立心の強いトルコがEUに加盟する場合、政策の統一・調整は不可能になろう。

   リストマーク オーストリア国防省安全保障政策事務所の見解



 トルコはNATOに加盟しているため、安全保障政策の分野において、統合関係はすでに構築されているとする見方もある。また、同政策上の理由から、EU加盟が不可欠になるわけではなく、戦略的パートナーシップを結ぶことで十分であるとする立場もある参照




 もっとも、トルコのEU加盟をあっさりと拒絶するのは、誤りであり、それは、制度改革を阻害し、また、急進派の動きを勢いづけることになろう。それゆえ、トルコには、特権的パートーナーとしての地位を与えるべきである。


(参照) ZDF
Osteuropa-Institut (東欧研究所)の懐疑論は こちら

Centre for European Union (CER) の擁護論は こちら

 

◎ Bolkestein 前欧州委員の消極論は こち



  




(2004年10月10日 記)