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トルコ系キプロス大統領、和平実現の可能性について語る


リストマーク トルコによるキプロス承認の可能性

 2005年10月3日(ないし4日)、EUはトルコとの加盟交渉を開始した(参照)。アジアにまたがるイスラム文化圏国の「ヨーロッパへの道のり」はまだまだ長く、念願が叶うのは、早くて2014年とされているが(参照)、30年以上に亘る キプロス問題 の解決も重要課題の一つである。(ギリシャ系)キプロスは、すでに2004年5月よりEUに加盟しているため、同国との和平なくして、トルコのEU加盟もありえないが、2005年5月、トルコ系キプロスの新大統領に就任した Mehmet Ali Talat 氏 (参照)は、トルコがギリシャ系キプロスを承認することはないであろうと述べている。なぜなら、承認するとすれば、トルコはキプロス島の北部を占領しているという事実を認めなければならず、場合によっては、補償を行う必要があるからとされる。Talat 大統領は、ドイツのニュース雑誌 Focus (42/2005, 272) のインタビュー記事の中でこのように述べ、早期的な和平実現の可能性を否定した。実際にトルコは、ギリシャ系キプロスの承認に懐疑的な発言を繰り返しており、EU加盟国の反発を招いている(参照)。



  リストマーク 「南」による「北」の吸収

 Focus 誌のインタビュー記事の中で、Talat 大統領は、自国とギリシャ系キプロスとの関係についても触れているが、それによれば、友好的な紛争解決に消極的なのはギリシャ系キプロスの方で、同国はトルコ系キプロスを「飲み込もうとしている」とされる。また、2004年5月、(ギリシャ系)キプロスが単独でEUに加盟した際、EUは、トルコ系キプロスの孤立を避けるため、支援策を打ち出しているが(参照)、EU・トルコ系キプロス間の直接的な貿易は、ギリシャ系キプロスの反対にあい、実現していないとされる(その後の経過については こちら)。ギリシャ系キプロスは、EU加盟国としての恩恵を今後も独占的に享受し、トルコ系キプロスの消滅を待ち望んでいると Talat 大統領は述べている。

 2004年4月24日の国民投票に際し、ギリシャ系キプロスの Papadopoulos 大統領は国連案の受け入れ拒否を訴えていたが(参照)、現在でも、トルコ系キプロスを独立した主権国家として認めず、紛争の平和的解決に反対しているものと解される。両国が互いに脅威を感じあっている現状下において、和平の実現は容易ではない。



(参照) Focus, 2005, Heft 42, Seite 272-273 ("Papadopoulos will uns schlucken")

Talat 大統領の就任
 

トルコ系キプロスの財政支援





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キプロス問題


(2005年112日 記)