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2005年10月3日の加盟交渉開始に向けて
トルコのEU加盟問題

トルコ国旗 2004年12月、EU加盟国首脳は、トルコとの加盟交渉を2005年10月3日に開始する計画を示した(欧州理事会決定)。10月3日までに、アンカラ政府は、@ 制度改革の推進、A キプロス共和国の承認(同国との関税同盟協定の締結)、B 宗教的および民族的少数派の保護に取り組まなければならないとされているが、昨年12月の欧州理事会の決定以降、改革路線は弱まっている(Rehn欧州委員、トルコの制度改革に懸念示す)。そのため、12月の決定は誤りであったとの声も聞こえる。

 従来、左派政党はトルコのEU加盟を支持してきたが、欧州議会内の社会党会派やドイツ社民党(SPD)の中からも懐疑論が主張されるようになっている(参照)。このような状況下、「トルコの後見役」を務めるドイツの Schröder 首相は、2005年5月3日、アンカラで Edrogan 首相と会談し、加盟交渉を予定通りに開始するには、制度改革が現実に実施される必要性を強調した。特に、キプロス共和国を(間接的に)承認することと、少数派の権利保護の重要性を指摘したが、Erdgoan 首相は具体的なコメントは避けている(参照)。

 アンカラ訪問に先立ち、Schröder 首相は、トルコのEU加盟を実現させる上で、両国間の緊密なパートナーシップが重要であると語っている。また、制度改革が容易ではないため、何らかの後退もありうるであろうが、断固とした取り組みと「メンタリティーの改革」が不可欠である と強調している。さらに、Erdogan 首相の見解に同意し、@ EUが北キプロス(トルコ系キプロス)に2億5900万ユーロの補助金を給付すること(これは、2004年4月、キプロス島の統一案が流れたことにより(参照)、実現していない)、また、A フランスとの間で生じているアルメニア人大量虐殺問題については、国際的な歴史専門家グループに鑑定を求めるべきとしている。

 



ドイツ国旗 ド イ ツ と ト ル コ トルコ国旗


 第2次世界大戦後、ドイツ国内には、多数のトルコ国民が移住し、戦後の経済ブームを支えた。ドイツ各地には、現在でも多数の移民2世ないし3世が居住している。従来は、2重に国籍を取得しえたが、国内法の改正に伴い、2000年以降は、どちらか一方の国籍しか認められない。そのため、何十万のトルコ系住民は、ドイツ国籍を失うことになった。2005年5月3日、アンカラを訪問したドイツの Schröder 首相は、問題の解決に迅速に取り組む意向を示した。

 ドイツ・トルコ間の経済関係は緊密で、伝統的に、ドイツはトルコにとって最大の貿易パートナーとなっている。とりわけ過去18ヶ月間は、ドイツ系企業の進出も大幅に増えている(2001年以降、ドイツからの輸出量は2桁の伸びを見せ、特に、2004年は32%の成長を記録し、輸出量は120億米国ドルに達している)。そのため、両国間の関係の強化や、ドイツ政府によるトルコのEU加盟支援は、経済面を重視しすぎていると批判されることもある(参照)。特に、保守系政党は、民族・文化・宗教的相違を理由に、トルコのEU加盟に反対している(詳しくは こちら)。ドイツ国民の3分の2も、トルコのEU加盟に消極であるとされる他、2005年に入ってからは、与党内からも批判が発せられている(参照)。




(参照) FAZ v. 4. Mai 2005 ("EU-Beitritt: Schröder drängt die Türkei zu weiteren Reformen")

FAZ v. 3. Mail 2005 ("Türkei: Bundeskanzler kommt in einer Boomzeit")

Die Presse v. 4. Mai 2005 ("Schröder geht auf Distanz zur Türkei")

Die Welt v. 3. Mai 2005 ("Kanzler fordert von Ankara Mentalitätswanden")

 



(2005年5月4日 記)