1. 国境検査
現在、イギリスとアイルランドを除くEU加盟国間では、シェンゲン協定 に基づき、国境検問が廃止されているが、新EU加盟国は、この協定を締結していない。より正確には、新規加盟国は、シェンゲン協定の締結基準を満たしていないため、締結しえない状況にある。そのため、EU拡大後も、現EU加盟国と新加盟国間の国境では、検問が実施される(国境に限らず、国際空港でも検査は行われる)。
検問の廃止は、EU内の治安維持に関わる重要な問題である。そのため、まず、新加盟国がシェンゲン協定締結の条件を満たし、同協定が締結された後に、国境検査は撤廃されることになる。
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2004年5月1日のEU加盟に際し、10ヶ国はシェンゲン協定を締結したが、誠実に履行しうる状況になかったため、実施は先送りされた。もっとも、2007年11月、EU理事会と欧州議会によって、シェンゲン協定圏の拡大が了承されたことを受け、キプロスを除く、9ヶ国は、同年12月21日より、シェンゲン制度に加わっている。同日、ドイツ、ポーランドとチェコが国境を接する三角地帯では、これらの3国の首相や、欧州議会議長、EU理事会議長国ポルトガルの首相、欧州委員会委員長が参加して式典が開かれた。
なお、キプロスは、トルコ系キプロス(北キプロス)から多数の難民(特に、イラク人)が押し寄せており、国境警備が不十分な状況にあるため、シェンゲン協定圏に参加していない。
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(参考) シェンゲン協定
2. 関税・商品の移動の自由
ECは、関税同盟を基礎にしている。そのため、EU拡大時より、直ちに、現加盟国と新加盟国間では関税が撤廃される。また、商品の流通も自由化される(参照)。なお、物品税が課される商品(コーヒー、タバコ製品、酒類等)を個人が非営利目的で搬入する場合、一定量を超えると関税が課される場合がある。営利目的で搬入される物品には、搬入国で消費税が課されるため、関税当局に申し出なければならない。
消費者が他のEU加盟国より関税を納めずに搬入しうる数量
は、以下のように制限される場合がある。
(例) |
ワイン 90リットル |
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ビール 110リットル |
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蒸留酒等のアルコール分の強い物品 10リットル |
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タバコ 200本 (マルタとキプロスからは800本) |
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3. 人の移動と開業の自由
商品の移動の自由とともに保障されている、人(労働者)の移動の自由には特則が設けられ、現加盟国はこれを7年間、制限することができる。ただし、マルタ人とキプロス人の移入は制限されない。他方、開業の自由は、EU加盟時より直ちに認められる。
なお、新加盟国の学生を対象にした留学支援プログラムは当面、存続するが、新加盟国の学生は、現加盟国の学生を対象にしたプログラム(Sokrates,
Leonardo da Vinci)にも参加しうる。
4. ユーロ
EU加盟に伴い、ユーロが新加盟国の通貨になるわけではない。ユーロが導入されるためには、マーストリヒト条約が定める基準を満た していなければならないが、当面、新加盟国は、自国通貨の対ユーロ相場を少なくとも2年間安定させることに努めなければならない。
新規加盟国 2007〜2010年のユーロ導入を目指す
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2004年11月10日、欧州委員会は、新加盟国のユーロ導入計画に関する報告書を公表した。それによると、現在、全ての国が単一通貨の導入を希望しており、以下の4ヶ国は、2007年内の導入を、また、残りの6ヶ国は、遅くとも2010年までに導入することを目標にしているとされる。
なお、エストニア、リトアニア、スロベニアは、すでに2004年6月28日より、導入要件の一つである為替相場メカニズム(ERM II)に参加している。その他の要件・基準 の充足も含め、各国の準備状況は欧州委員会によって、少なくとも年1回、調査される。また、導入に関する最終決定は、委員会の提案に基づき、EU理事会が行うことになる。
ギリシャを除く現在のユーロ導入国では、導入時から単一通貨が実際に流通されるまで、3年の準備期間が設けられていたが、
良い評価は得られていないため、この期間は短縮されるものと解されている。なお、多くの新規加盟国は、すでに硬貨のデザインを検討しているとされる。
Eurobarometer の調査によると、ユーロの導入に関心のある新EU市民は決して多くなく、50%に留まっているとされる。
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(2004年11月12日 記) |
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スロベニア、2007年内導入の可能性高まる
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2006年2月25日付けの Die Presse 紙によると、 欧州委員会の Almunia 委員(経済・通貨政策担当)は、スロベニアは ユーロ導入要件 をすべて満たしており、2007年内の導入が可能であることを示唆したとされる。欧州委員会および欧州中央銀行による最終判断は、2006年10月に下されるが、同年6月の仮評価の時点ですでにゴーサインが下される可能性がある。なお、単一通貨の導入には、スロベニア国民の支持も不可欠であるが、66%の国民が賛成しているとされる(参照)。
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スロベニアの経済状況
・ 財政赤字 GDPの2.1%
・ 債務残高 GDPの29.9%
・ インフレ率 2.4% |
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他方、エストニア やリトアニアは、インフレ率が高く、2007年内のユーロ導入は困難と見られている。
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5. 農業政策
農業政策改革については こちら
5. レンタカーに関する制限
従来より、特定車種をレンタカーとして東欧諸国に貸し出すことは禁止されていたが、この規制は今後も適用される。
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