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225a条(新規定)

The Council, acting unanimously on a proposal from the Commission and after consulting the European Parliament and the Court of Justice or at the request of the Court of Justice and after consulting the European Parliament and the Commission, may create judicial panels to hear and determine at first instance certain classes of action or proceeding brought in specific areas.

The decision establishing a judicial panel shall lay down the rules on the organisation of the panel and the extent of the jurisdiction conferred upon it.

Decisions given by judicial panels may be subject to a right of appeal on points of law only or, when provided for in the decision establishing the panel, a right of appeal also on matters of fact, before the Court of First Instance.

The members of the judicial panels shall be chosen from persons whose independence is beyond doubt and who possess the ability required for appointment to judicial office. They shall be appointed by the Council, acting unanimously.

The judicial panels shall establish their Rules of Procedure in agreement with the Court of Justice. Those Rules shall require the approval of the Council, acting by a qualified majority.

Unless the decision establishing the judicial panel provides otherwise, the provisions of this Treaty relating to the Court of Justice and the provisions of the Statute of the Court of Justice shall apply to the judicial panels.

 

解説

 EC条約内に新たに取り入れられた第225a条は、司法小委員会(judicial panels/chambres juridictionnelles/gerichtliche Kammern)の設置について定めているが、これは第225条第3項と並び、最も重要な改正点の一つに当たる。

 

(1) 1

 第1項は、司法小委員会の設置について定めているが、同小委員会は、以下の手続に従い、理事会の全会一致による決定に基づき設置されうる(リスボン条約による改正については こちら

 

@   委員会の提案(proposal)を受け、欧州議会およびEC裁判所の意見を聞いた後、理事会が決定を発する。

A   EC裁判所の要請(request)があるときは、欧州議会および欧州委員会の意見を聞いた後、理事会が決定を下す。

 

  このように第1項では、委員会とEC裁判所の立場が形式的に区別されているが、ニース条約第16宣言は、両者を区別せず、それぞれに(いわゆるstaff cases を審理する司法小委員会の設立について)決定草案を迅速に作成するよう要請している。なお、小委員会は第1審裁判所の下に置かれるが(第220条第2項)、第1審裁判所には設置を要請する権限は与えられていない。

 

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 実際に、理事会は、2004年11月、EC・職員間の紛争に関する訴え(いわゆる 、staff cases)について審理する特別な裁判所(Civil Service Tribunal)の設置について決定を制定し(Decision 2004/752/EC of Council of 2. 11. 2004, OJ 2004, L 337, p. 7)、新しい裁判所は2005年に設けられている(詳しくは こちら)。

 

 前述したことからも分かるように、決定の制定に際し、欧州議会は諮問権しか有さないため、理事会は議会の見解に拘束されない。また、司法小委員会は、加盟国政府ではなく、理事会によって設立される(同小委員会の構成員の任命についても同様である(第4項参照))。

司法小委員会は常設の機関か、それとも非常設の機関かどうかは、EC条約の規定からは明らかにならない。また、設置場所も特定されていないが、規定の文言上、複数設置することも可能であり、管轄分野ごとに小委員会が設けられることになろう(後述第2項の解説参照)。

 

(2) 2項 

 司法小委員会の組織および管轄権は、同小委員会の設立に関する決定の中で定められる(第2項)。その管轄権は、第1審裁判所より委譲されなければならないわけではないが、小委員会が第1審裁判所に帰属することを考慮すると(新第220条第2項参照)、そのようになる可能性が高い。なお、ニース条約第16宣言では、小委員会は、ECとその職員間の紛争に関して管轄権を有するとされている。その他、工業所有権に関する訴えが考えられるが(229a条の解説参照)、それには、すでに設置されている域内市場調整事務所(OHIM)またはその控訴審(OHIM Boards of Appeal)との権限の調整が必要になる。また、EC特許に関しては、2010年までにCommunity Patent Courtと称する司法小委員会をルクセンブルクに設置することが理事会で了承されている。

 

(3) 3項 

 同小委員会の判断は、法律判断に関するものに限り、第1審裁判所に控訴することができる(この点につき、225条第2を参照されたい)。ただし、同小委員会の設立に関する決定が認めるときは、事実認定についても控訴しうる。

 

(4) 4

 同小委員会のメンバーは、@完全な独立性とA法律職に必要な能力を有する者の中から選任されなければならない。@の要件は、EC裁判所判事・法務官および第1審裁判所判事の場合と同じであるが、Aの要件は、「最高の」(EC裁判所判事・法務官)、または「高度の」(第1審裁判所)法律職ということを要求していない(第4項前段)。実際には、同小委員会の管轄事項に関する専門家が任命されることになろう。

 同小委員会のメンバーは、理事会の全会一致によって任命されるが(第4項後段)、これは、EC裁判所判事・法務官および第1審裁判所判事が、加盟国政府の相互承認によって任命されるのとは異なる。すなわち、後者は、諸機関の均衡(裁判所と理事会の均衡)を図るためにそうなっているが、小委員会については、これが要請されない。

 

(5) 5項 

 同小委員会の手続規則(Rules of Procedure)は、同小委員会によって制定されるが、EC裁判所の同意を必要とする(第5項前段)。また、理事会の特定多数決による承認も必要であるが(同後段)、これは、EC裁判所・第1審裁判所の手続規則の制定の場合と異ならない。

 

(6) 6

 同小委員会の設立に関する理事会決定が別段の定めを置いていない場合は、EC条約内のEC裁判所に関する規定とEC裁判所規程は、同小委員会にも適用される。

 





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