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221

The Court of Justice shall consist of one judge per Member State. 

The Court of Justice shall sit in chambers or in a Grand Chamber, in accordance with the rules laid down for that purpose in the Statute of the Court of Justice.

When provided for in the Statute, the Court of Justice may also sit as a full Court.

 

[旧第221条]

The Court of Justice shall consist of 15 Judges.

The Court of Justice shall sit in plenary session. It may, however, form chambers, each consisting of three, five or seven Judges, either to undertake certain preparatory inquiries or to adjudicate on particular categories of cases in accordance with rules laid down for these purposes.

The Court of Justice shall sit in plenary session when a Member State or a Community institution that is a party to the proceedings so requests.

Should the Court of Justice so request, the Council may, acting unanimously, increase the number of Judges and make the necessary adjustments to the second and third paragraphs of this Article and to the second paragraph of Article 223.

 

解説

(1) 1

 旧第1項は、EC裁判所15名の裁判官からなると定めていたが、新第1項は、各加盟国より1名の裁判官で構成されると規定する。これはニース条約制定当時の実務に合致するが、旧法のように判事数を特定していないのは、加盟国数の増加に伴う条約改正を避けるためであると説明されている。しかし、それ以上に、“one judge per Member State” の原則を明確にし、新規加盟国からも判事が選出されることを保障する上で重要である。すなわち、旧法のように、判事は15名であるとすると、各国より1人の裁判官が選出されるとは限らない。なぜなら、ある加盟国より複数名が選出される一方で、その他の加盟国からは一人も選出されないとすれば、結果として15名に納まるからである。各国の法制度を適切に反映させるため、また、EC裁判所に対する各国の信頼を維持するといった観点から、“one judge per Member State” の原則の妥当性は広く支持されており、構成員の増加は欧州委員会の場合のように問題視されていない。

 旧第221条第4項によれば、EU理事会は、裁判官の定数を全会一致で変更することができたが、この規定は削除された。新第1項によれば、判事の増員は、第三国のEU加盟に基づき、自動的に行われる。その他の方法による場合には、条約の改正を必要とする。

 EU拡大が実現していない現在、EC裁判所判事の定数は15名であるが、新規定に従い、将来、裁判官の数が増えるとすれば、これが偶数になることもありうる。この場合、新EC裁判所規程第17第1項(旧第15条前段)によれば、EC裁判所の判断は、奇数名の判事で審議されるときに限り有効であるので、判事全員で構成される大法廷(plenary)の開廷には問題が生じるようにも解されるが、新規程第17条第4項によれば、大法廷の審判は11名の判事が出廷していれば有効であるので、支障をきたさない(なお、旧法上(規程第15条)は、この人数は9名であった)。

 

(2) 2

 旧第221条第2項によると、EC裁判所は、判事全員で構成される大法廷(plenary session)での審理を原則とし、3名、5名または7名の裁判官からなる裁判部(chamber)を開くことも認められていたが、もっとも、訴訟件数の増加に伴い、裁判部による場合が多くなっていた。新第2項は、この実務を承継し、裁判部審理を原則としている(大法廷の開廷に関しては、第3項を参照されたい)。なお、ニース条約に基づき、新たに大裁判部(Grand Chamber)が設けられることになった。裁判部または大裁判部の何れによるかは、EC裁判所規程で定めるものとするが、これは、条約の改正を必要としない、柔軟な対応を目的としている。

裁判部の構成も、EC裁判所規程の中で定められるが(第221条第2項)、新規程第16条(新規定)によると、裁判部は、3名または5名の裁判官で構成される(第1項第1文)。各裁判部は、所属する判事の中から裁判部の長を選任しなければならないが(同第2文)、5名の裁判官からなる裁判部の長については、任期が3年で(同第3文)、1回限り再選されうる旨が規定されている(同第4文)。なお、従来の実務でも重要性を失っていた7名の裁判官からなる裁判部は廃止された。

他方、ニース条約に基づき初めて導入された大裁判部は、11名の裁判官で構成され(新規程第16条第2項前段)、EC裁判所長官によって統括される(同中段)。なお、大裁判部は、@同長官の他に、A 5名の裁判官で構成される裁判部の長と、BEC裁判所手続規則に従い選出された裁判官からなる(同後段)。将来、EU加盟国数が22以上になり、EC裁判所の判事数も22以上になると、大裁判部を複数設けることが可能になるが、それによって同裁判所の訴訟処理能力は向上しよう。

新規程第17条は、3名または5名の裁判官からなる裁判部の判断は、3名の裁判官によって下される場合にのみ有効である(第2項)。また、大裁判部に関しては、9名の判事が出廷する場合にのみ有効となる(第3項)。なお、前述したように、大法廷の場合は11名である(第4項)。

 

(3) 3

 前述したように、新条約の下では、裁判部審理が原則となるが、EC裁判所規程が定める場合は、大法廷(full Court/assemblée plénière/Plenum)を開くことも可能である。大法廷を例外としたのは、訴訟件数の増加だけではなく、将来のEU拡大に伴う判事数の増加を考慮したためである。EC法の統一と一貫性の確保といった従来の大法廷の責務は、大裁判部に継承されることになった。この意味において、大裁判部はEC裁判所の “permanent core”と解される。


 大法廷による場合について、EC裁判所規程は以下のように定めている。


@ 次の規定に基づき訴えが提起される場合には、大法廷で審理されなければならない(新EC裁判所規程第16条第4項)。

EC条約第195条第2項(欧州議会のオンブズマンの解任

同第213条(欧州委員の職務・倫理規定)

同第216条(欧州委員の解任)

同第247条第7項(会計検査院のメンバーの解任)


原子力共同体条約第107d条第2項(欧州議会のオンブズマンの解任)

同第126条第2項(欧州委員の職務・倫理規定)

同第129条(欧州委員の解任)

同第160b条第7項(会計検査院のメンバーの解任)



 なお、従来の実務上、これらの規定に基づき訴えが提起されるのは、非常にまれである。


A   EC裁判所が、極めて重要であると考える場合には、法務官に審問した後で、事件を大法廷に移送しうる(新規程第16条第5項)。

  





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