2006年、フランスはヨーロッパ内で最も出生率(2.1%)の高い国となり注目されているが、隣国のドイツとは異なり、複数の子供を産む女性の数が大幅に伸びていることが出生率の増加に貢献している。その要因としては、かねてより、大家族に有利な税制措置が指摘されているが、仕事と子育ての両立を可能にする現代的な社会の役割も無視しえない。統計によると、25〜49歳のフランス人女性の5人に4人は仕事を持ち、また、全女性の約80%は2人の子供を産みながら、仕事を継続している(これに対し、ドイツ人女性の割合は63%である)。これを可能にしているのは、託児所や、3歳児からの無料の幼稚園
(école
maternelle)、また、それに続く全日制の学校といった制度であるが、子供の世話などの保育サービスが国内経済全体に占める割合も高くなっている(GDPの1.6%、これに対し、ドイツは0.80%)。また、ドイツとは違い、乳母(nounous)が自宅にやってきて子供の面倒をみることも浸透しており[1]、国によって「保育ママ」が養成されている。また、保育費は、年間に15000ユーロまで税控除することができる(ドイツは4000ユーロまで)。
子育て支援策はこれに留まらず、フランス政府は、5年後には3歳未満の全ての子供に対し育児支援を行うことを目指している。また、3人の子供を持つ Nicolas Sarkozy
大統領も、選挙戦(2007年の大統領選挙戦)において、「子供の養育に関する基本権」(Grundrechte
auf Kinderbetreuung)を力説していた。
さらに、出生率の増加は、何十年にもわたり、次第に改められてきた国民意識の変化にも基づいている。つまり、子供は常に母親の下で過ごさなければならないという観念は次第に取り除かれてきたことが出生率増加の基盤となっている。他人でも母親と同じように子育てを行いうるという考えは母親自身によって広く受け入れており、第3者による保育は自明の理とされている(これに対し、ドイツではそのような考えが浸透しているとはいえない)。
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