TOP      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ



欧州憲法


イ ギ リ ス、批 准 手 続 を 一 時 凍 結

イギリス国旗ECの原加盟国である フランスオランダ の国民投票で、憲法条約の批准が否決されたことを受け、6月6日、イギリス政府は、自国の批准手続(国民投票の実施)を一時、凍結することを明らかにした(詳しくは こちら)。これは、6月月5日(土)に出された独仏首脳の要請(詳しくは こちら)や、 Barroso 欧州委員会委員長 の訴えに耳をかさず、独自の行動にでることを意味している。かねてより批准手続の続行を訴えてきた Barroso 委員長は、6日に Blair 首相の声明が発表される直前にも、単独行動を慎むよう加盟国に呼びかけていた(参照)。

 6月6日午後、下院において、イギリスの Straw 外相は、もはや自国でも国民投票を実施する意義は見出せないと述べると共に、状況が変われば、実施する用意があると説明している。また、批准手続の暫定的中断は、憲法条約の「死」を意味しているわけではないとしている(詳しくは こちら)。

 イギリス政府のこの方針について、EU理事会 議長国の Jean-Claude Juncker 首相 欧州委員会Barroso 委員長 は 、6月6日、Blair 政権は、批准見送りを確定したわけではないとし、憲法条約の「死」を否定している(参照)。他方、イギリスは、「第3のNo!」を突きつけており、憲法条約の生命は、事実上絶たれているとみる専門家もある(詳しくは こちら)。


リストマーク イギリス人のものの見方

Duisenberg 氏、イギリスの方針を評価

批准手続中断の法的許容性について





リストマーク 批准手続、一時凍結の背景

 欧州憲法条約批准の是非を問う国民投票が、無期限に延期されたことについて、イギリス出身の Peter Mandelson 欧州委員(通商政策担当)は、Blair 政権の延命策としての意義を強調している。確かに、Blair 首相は、去る5月に再選を果たしているが、任期を最後まで全うすることなく、人気の高い Brown 経済省に後釜を譲ると見られている。その引き際として有力視されていたのは、欧州憲法条約に関する国民投票(従来の予定では、2006年上半期に実施が計画されていた)であり、批准反対票が過半数に達することは、ほぼ確実と考えられている(参照)。この危険性を回避すれば、現政権の存続期間は延び、Blair 首相の政治生命に新たな汚点をつけることも避けられると見られている。



Mandelson 欧州委員

Mandelson 欧州委員

写真提供:
Audiovisual Library European Commission



リストマーク 批准手続中断の法的許容性

 ところで、欧州委員会は、批准手続を一方的に中断するのは、国際法に反するとして、英政府の決定に異議を述べているとされる。その根拠として、「条約法に関するウィーン条約」第18条が挙げられているが、同規定によれば、各国は、条約が発効するまで、条約の趣旨や目的を失わせるような行為をしてはならない。

 これに対し、イギリス外交筋は、フランスオランダ の批准見送りを受け、憲法条約の生命は実質的に絶たれており、英政府の方針は、このような危機的状況(憲法条約の「早すぎる死」)を回避するものであると反論している。

 法的には、批准手続を(いつまでも)継続することが可能であるが、政治的には、手続の続行はもはや意味をなさなくなることがあるとみる専門家もいる。


(参照)

Die Welt v. 7. Juni 2005 (Im Streit um die Regeln der Ratifizierung)





リストマーク イギリスは欧州統合の足かせ?

 従来より、イギリスは、EU統合に懐疑的なことで知られている。しかし、近時の市場統合政策の面では、統合推進派として知られる「古いヨーロッパ」諸国より、はるかに親EU派であると考えることもできる。

 2004年5月の 東方拡大 以降、イギリスはドイツのように新EU市民の移住を制限しておらず、すでに、17万6千の東欧人が、海を渡り新しい職を見つけている。ポーランド人だけでも9万2000人に上るとされるが、フランスの国民投票の際にみられたポーランド人に対する批判(詳しくは こちら)は、イギリスではあまり聞かれないとされる(参照)。






リストマーク  欧州憲法条約批准手続のゆくえ
 
 各国の批准状況

 欧州憲法条約


 英国流「欧州統合懐疑論」の再燃か



(参照)

Die Welt v. 7. Juni 2005 (Im Streit um die Regeln der Ratifizierung)

Die Welt v. 7. Juni 2005 (Briten sagen Referendum zur EU-Verfassung ab)

Die Welt v. 7. Juni 2005 (Plan "B" wie Blair)